“1ドル=150円”の急激な「円安」が進む為替市場の見通しを解説! 2023年前半まで利上げが続いて円安が進むも、インフレ率が落ち着けば「円高」に転換か!?
32年ぶりに「1ドル=150円」を突破した円安はいつまで続く? 急激な円安が進む理由や為替介入の効果、今後の展望をエコノミストに直撃! では、毎号巻頭で、経済や金融にかかわる最新ニュースを紹介している。10月21日 ●米国の利上げに伴って、為替は1ドル=150円目前に! その余波で、将来的に欧米の景気減速が深刻になる懸念も 円安の流れが止まらない。日本以外の主要各国が、インフレ(物価上昇)率を抑えることを目的として、政策金利を引き上げているからだ。資金は金利が高い通貨に流れるため、低金利政策を維持する日本円は、主要通貨に対して安くなっている。 ここで、主要各国の政策金利の長期的な推移を振り返ってみよう。リーマン・ショックが勃発した2008年以降、金融危機に対応するため、各国は政策金利を引き下げた。好景気を背景に2015年末から利上げを始めたのは、米国のみ。欧州の国々は、長期で低金利を継続してきた。 だが、その米国もコロナ禍による景気悪化を回避するため、大幅な財政出動に加えて、再び低金利政策に転じた。そこに、ウクライナ戦争が勃発。欧州では、エネルギー供給問題による価格上昇を主因として、インフレ率が予想以上に上昇した。米国はロシアとの直接的な貿易関係はないものの、コロナ禍での景気対策が需要をかなり押し上げたため、インフレ率が高まった。 今後の最悪のシナリオは、インフレが長期で続き、景気が悪いのに物価は高い状態――いわゆるスタグフレーションに陥ることだ。これを阻止するため、各国は必死で利上げを推進している。 「米国以外の主要国は、物価上昇を抑えるという目的以上に通貨の安定のため、米国に遅れないように利上げをしています。欧州の景気はそこまでよくないはずですが、米国と足並みを揃えた利上げが続くでしょう」(野村総合研究所・エグゼクティブ・エコノミストの木内登英さん) 日本政府は、円安の進行を見かねて円買いの為替介入を行っている。しかし「日本の単独介入で、外貨準備高が財源で限度があるため、効果は低い。時間稼ぎにすぎず、米国の利上げが進めば、1ドル=150円までの円安はあり得る」と木内さんは見ている(※取材は10月初旬。取材後の10月20日に1ドル=150円超まで円安が進行)。 過去の推移と比べてみると、今回の利上げのスピードは異例とも言える。 「通常なら、経済状況を見ながら段階的に利上げしますが、今回は想定以上にインフレが長引いたために焦りがあり、急ピッチで利上げが進められています。米国は必要以上に経済を引き締めすぎてしまう可能性があり、効果が出てくる来年以降の景気減速には注意しておく必要があります」(みずほ証券シニアマーケットエコノミストの松尾勇佑さん) 雇用市場こそ堅調ではあるが、米国も欧州も今回は好景気を背景とした利上げではない。 「コロナ禍やウクライナ戦争前より世界経済の成長力が増したわけではありません。だから、インフレ率が落ち着けば、歴史的な低金利の状態に戻ると考えています。いま一番のリスクは欧州経済。経済が弱いなかで、無理やり利上げをしている状態です。足元で英国の政策が混乱していることからもわかるように、欧州発で金融市場の混乱が起こる可能性も。そうなれば、世界的に再び金融緩和=利下げに転じざるをえないでしょう」(木内さん) FRB(米国の連邦準備制度理事会)が示唆しているとおり、米国は来年前半までに4%台まで利上げが進む可能性があり、そうなれば円安は続くだろう。ただし、「欧州経済が崩れることになれば、対ユーロについては、対米ドルと比べると早く円高に転じる可能性も」(松尾さん)ありそうだ。
ザイ編集部