「インフレ後の世界で日本だけがダメになる」経済学者クルーグマンの最終通告

2022年08月04日

ポール・クルーグマン。2008年にノーベル経済学賞を受賞。現在はニューヨーク市立大学大学院センターの教授を務めるほか、『ニューヨーク・タイムズ』のコラムニストとしても知られる。今日、世界で最も影響力を持つ経済学者の一人である。 【写真】値上げラッシュに対抗!「売ると意外に儲かるモノ」30選  IMF(国際通貨基金)は7月26日、「世界経済見通し」の中で、今年の世界経済成長率は3.2%に減速する見込みと発表。新型コロナウイルスの再拡大やロシア・ウクライナ戦争、そしてインフレの加速などを背景に景気後退入りの恐れがあるとした。  ​ますます混沌と化す世界――クルーグマンは取材を通じて、特に日本経済に対して強い懸念を示し、「警告」を発した。

いつまでインフレは続くのか

 今、世界でどの国も頭を抱えているのがインフレの危機です。  とりわけアメリカのインフレの勢いは凄まじく、今年6月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比の伸び率9.1%でした。この数値は第2次オイルショック後の'81年12月以来、約40年ぶりの高水準です。  もしかすると、近いうちにインフレ率はもう一段階上昇する可能性もあります。他の企業が値上げをすると思われるから、自分の企業も値上げをする。この「インフレ予想の定着」と呼ばれる現象と、それに付随する便乗値上げが予測されます。  ただFRB(米連邦準備制度理事会)も黙ってはいません。今年6月に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、約27年半ぶりとなる0.75%の大幅な政策金利引き上げを決めました。このインフレ抑制の努力は、すでにアメリカの住宅ローン金利の上昇などの形で表れています。

寸断されたサプライチェーン

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 先に結論から申しあげれば、私はこのインフレ危機は2022年いっぱいで一旦、収束に向かうと考えています。  ご存じの通り、今の世界的なインフレは「サプライチェーン(製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れ)」の寸断によって引き起こされています。  中国では依然として、新型コロナウイルス感染拡大への対策のため、各地でロックダウン(都市封鎖)が行われています。このゼロコロナ政策のために、自動車部品・電子部品の輸出制限が続き、世界のサプライチェーンに甚大な負の影響を及ぼしています。  そこに輪をかけて打撃を与えたのが、ロシアのウクライナ侵攻。  たとえば小麦価格の高騰による食糧危機が問題となっています。小麦の輸出量はウクライナが世界5位、ロシアが世界1位で、両国合わせて世界の輸出量の約3割を占めています。それがロシアによる黒海封鎖によって、小麦が運び出されず、小売価格は大幅に上昇しています。  意外だったのが、自動車価格の高騰ではないでしょうか。  自動車の製造には、電源供給などに使われる「ワイヤーハーネス」という部品が不可欠なのですが、欧州の製造の大部分をウクライナが担っていたのです。自動車業界に影響を及ぼすとは、あまり予想されなかった事態です。  エネルギー価格の高騰も喫緊の課題です。  '15年頃より欧米では脱炭素に向けたエネルギー政策の転換が行われ、エネルギー価格は上昇していました。そこにロシア・ウクライナ戦争による天然ガスの供給不安が発生し、エネルギー価格をさらに押し上げています。

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