「ゼロ金利の終了」でマンション価格は下がるか 山高ければ谷深し…長期低迷する「失われた〇年」になるかもしれない
【マンション業界の秘密】
昨年末、日本銀行は突如として長期金利の上限を0・25%分引き上げて0・5%とした。これはかなりのサプライズであった。すかさず市場は「株安」「円高」へと反応。市場では「異次元金融緩和の終了か」と囁かれた。
金利と不動産は、株式や外為ほどではないにしろ、連動関係にある。金利が上がれば不動産価格が下がるというのがセオリーなのだ。
お隣の韓国では昨年、アメリカの金利上昇に合わせて金融引き締めを行った結果、マンション価格が下落してちょっとした混乱が生じている。日本も同じような軌跡をたどるのか。
日本銀行の総裁はこの4月に交代する。長らく続いた黒田東彦総裁による異次元金融緩和も、それによって終了するのが確実になった。日本も4月以降に金利が上がり始める可能性が高い。
日銀が決める政策金利が上がると、住宅ローンの金利も引き上げられる。アメリカでは30年返済の住宅ローン金利が7%になっている。それで、すっかり住宅が売れなくなっているという。
日本はアメリカほど急激には金利を引き上げられないだろうが、「史上最低水準」ではなくなる。つまり、過去6年間に比べると明確に高くなるだろう。そうなれば同じ額のローンを組んでも、返済額が増える。
加えて、マンション市場をバックアップしてきた住宅ローン控除が縮小された。人件費の高騰から管理費や修繕積立金はインフレ状態。さらにタワマンの高層階購入による相続税の軽減効果も徐々に怪しくなってきた。世界的な不動産市場の低迷で、これまでのような外国人の購入も今後は細りそうだ。
2023年のマンション市場はアゲンストの風が強く吹きそうである。
なかでも、もっとも強力なのが、この〝金利の上昇〟である。住宅ローンやアパートローンの金利が上がれば、市場に対しては明確な下落圧力となる。
まずは、不動産の取引数が減少していく。それが何カ月か続いた後、多くの人に下落が認知できる状況となる。マンションの価格が「下がった」という状況がみえてくるのは、早くても今年の後半だろう。
長く続いた「史上最低金利」によって、今のマンション市場には投資や投機、相続税対策が目的の買い手がウヨウヨしている。彼らは基本的に「住むため」に購入するわけではない。だから都心や湾岸のタワマンなどは、誰も住んでいない空室がかなり目立っている。
市場が下落期に入ると、それらの住戸が順次売却に回される。それがまた、市場への下落圧力になる。
山高ければ谷深し、と言う。今年の後半から始まるマンション市場の下落期は、ちょっと深刻になる。長期低迷する「失われた〇年」になるかもしれない。
これは世界の経済状況と日本の金融政策によって変わる。今後の展開を見守りたい。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。