「トランプは同盟に興味を示したことも理解したこともない」2期目トランプの外交・権力強化予測
※前編:トランプが次期大統領になったら「本当に常軌を逸したことが始まる」 人事、軍掌握、対ロシア より続く。 【映像】トランプ前大統領をつつくハクトウワシ 周囲を追従者で固めたトランプは、バイデン政権の施策を取り消そうと大統領令を乱発する可能性が高い。 「2度目のチャンスを手にしたら、相手側が抵抗する前に素早く仕掛けるのが鉄則だ」と、リンカーン・プロジェクトのゲーレンは言う。 大統領令なら、議会を説得して法案を通さなくても経済政策から社会福祉まで、あらゆる政策を変更できる。トランプが1期目に署名した大統領令は220件に上る(バラク・オバマ元大統領の1期目は147件)。 大統領令はしばしば憲法上の「グレーゾーン」に位置付けられる。法律の制定を通じて国を統治する議会の権利と衝突するからだ。 例えば、トランプは大統領就任直後にオバマケア(医療保険制度改革)の無効化を狙う大統領令を出したが、この試みは失敗に終わった。
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それでも、9人の連邦最高裁判事のうち6人を保守派が占め、その半数がトランプの指名であること、連邦裁判所全体でも現役判事の約4分の1をトランプが指名していることを考えると、大統領令が一定の効果を発揮する可能性はある。 トランプが権力強化のために次に手を付けるのは、おそらく米軍に対する支配力を強めることだろう。 憲法は大統領が国内で軍を使うことを禁じている。連邦政府の法執行機関を政治目的のために動かすことも、長年の慣行からご法度だ。 だがトランプは1期目の2020年、移民関税執行局(ICE)や税関・国境取締局を使い、「BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動」のデモ参加者を監視し、拘束した。首都ワシントンだけで700人もの捜査官が配置された。 このときトランプは、ホワイトハウス前にいた平和的なデモ隊を暴力的に排除させ、戦闘服姿のマーク・ミリー統合参謀本部議長らを引き連れて、近くの教会まで歩いて行くパフォーマンスをメディアに撮らせた。 ミリーはその後、内政に関わらないはずの米軍が、トランプの暴挙をサポートしているように見えることをしてしまったとして謝罪している。 トランプが大統領に復帰した場合、米軍を意のままに操り、法執行機関に命じて敵と見なす相手に嫌がらせをしようとする動きを一気に強めるかもしれない。手始めに自分に抵抗しそうな軍首脳を最大限入れ替えるだろうと、トレメインは主張する。 「自分に忠実な人間を軍に送り込めるようになる。それは確実だ」 トランプは米軍を支配下に置くため、巨額の国防予算を組むだろうと、チェイニー副大統領の国家安全保障担当副補佐官を務めたプリンストン大学のアーロン・フリードバーグ教授(政治・国際問題)は指摘する。 「国防費の優先順位は高いはずだ」 FBIを含む司法省の粛清人事と、民主党の政敵を調査し、リベラル派のデモを武力で抑え込む人物の幹部登用も早急に進めるはずだ。 「トランプはとにかく復讐したいのだ」と、ボルトンは指摘する。2020年大統領選の敗北とさまざまな調査や捜査の結果、トランプは自分を敗者と見なす風潮に対し、強い戦闘意欲を持つようになったという。 そのため政府のさまざまな部門が、トランプの怒りと不安をぶつける道具と化すだろう。 「司法省やIRSに政敵への監督と嫌がらせを指示するはずだ」と、ゲーレンは言う。