「マイナスになるのを抑えるだけ」20年後の日本を待ち受ける、医療・福祉が最大産業になるというリアル
今後、医療・福祉産業が拡大する半面で他の産業が縮小するため、日本の経済構造は大きく変わる。こうした経済を維持できるのだろうか? 昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第77回。 【グラフなど】日本に1%成長の実現が強く求められる切実な訳 ■2040年度で、医療・福祉は全体の18.8% 内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省が2018年にまとめた「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」(以下、「見通し」という)によると、医療・福祉分野の就業者は、つぎのとおりだ。
2018年度においては、823万人。これは、総就業者数6580万人の12.5%になる。 2040年度においては、1065万人になると予測される(計画ベース)。これは、総就業者数5654万人の18.8%になる。 全体の就業者が減る中で医療・福祉が増えるのだから、日本経済は、深刻な労働力不足に見舞われると予測される。 ■生産性が向上しても、必要就業者数はあまり減らない 同時に公表された「「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」に基づくマンパワーのシミュレーション」(2018年5月)において、条件を変えた場合のシミュレーションが行われている。
それによると、2040年度における医療・福祉分野の就業者数は、つぎのとおりだ。 「医療・介護の需要が低下した場合」には、983万人。 「生産性が向上した場合」には1012万人だ。 このように、結果は上記「計画ベース」とあまり変わらない。 将来における医療介護技術の進歩が期待されるのだが、必要な就業者数にはあまり大きな影響を与えないことがわかる。 経済全体の就業構造の変化を見るために、総務省統計局の産業別就業者数を参照しよう。
2018年においては、就業者数は6682万人、うち、医療・福祉は834万人だ。 どちらも、前記の「見通し」とは完全には一致しないのだが、ほぼ同じだ。違いは、「見通し」を作成した時点で、労働力調査の確報が得られていなかったからだろう(年度と暦年の違いもある)。 そこで以下では、つぎのように考えることとした。 ・2020年までは、労働力調査の値を用いる。 ・2040年について、就業者総数と医療・福祉就業者は、「見通し」の「計画ベース」の数字を用いる。