「円安」はまだまだ続き、日本人の生活を圧迫する…「アメリカが発表した数字」が示すこと
日米の対照的な状況
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7月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が予想を上回る52.8万人増加した。 失業率は3.5%に低下した。 【写真】日本、じつは「先進国で断トツ最下位」に...! 米国の労働市場はタイトな状況が続いている。 連邦準備制度理事会(FRB)は大幅な利上げと量的引き締め(QT)を進めているものの、今のところ米国の労働市場はひっ迫したままだ。 それに伴い、賃金の上昇は米国のインフレ圧力を強めることが懸念される。 今後、FRBがインフレ退治のため追加利上げは不可避だ。 金融引き締めは長引き、米金利には上昇圧力がかかりやすい。 その一方で、わが国の賃金は伸びづらく、日本銀行が異次元の金融緩和を正常化するには時間がかかる。 日米の金利差は一段と拡大する可能性が高い。 ドルに対する円安圧力は、これからも続く可能性がある。 現在のわが国経済にとって、円安のプラス面よりもよりもマイナスの方が大きい。 わが国の個人消費の回復は遅れている。 それに加えて、脱グローバル化によってエネルギー資源や穀物などの供給体制は不安定化している。 その状況下で円安が進むと輸入物価が追加的に上昇する。 それが現実味を帯びてくると、わが国のインフレ率の上昇や景気減速などの懸念はさらに高まることが懸念される。
賃金インフレの抑え込みに必死のFRB
6月、米国の生産者物価指数(PPI)は前年同月比で11.3%、消費者物価指数(CPI)は同9.1%上昇した。 ガソリン価格下落などによって、7月のCPIは同8.5%上昇と伸び率は縮小したが依然として物価水準は高い。 また、7月の雇用統計では失業率が3.5%に低下し、時間当たり賃金は同5.2%増加した。 タイトな労働市場を背景に賃金が増えているため、個人消費は底堅い。 企業は増加したコストを価格に転嫁しやすい。 米国のインフレ圧力にはやや鈍化の兆しが出てはいるものの、米国の求人件数は高水準を維持している。 6月の非農業部門の求人件数(速報)は1069.8万件だった。 7月の完全失業者数が567万人だったことを踏まえると、人手不足は深刻だ。 一部のIT先端企業などで雇用削減の動きが徐々に出てはいるものの、業況が相対的に良いサービス業を中心に賃金には上昇圧力がかかりやすい状況にある。 一方、原油価格が下落しガソリン価格が下落したことは、米国のインフレ圧力を幾分か弱めるだろう。 ただ、それが直ぐに物価下落につながるとは考えにくい。 米国では個人の物価上昇率予想が小幅に低下したものの、過去に比べて水準自体は依然として高い。 家賃も上昇している。 米国経済では、賃金の増加が経済全体での物価上昇予想を押し上げ、その結果として物価が上昇した。 米国では賃金インフレが鮮明だ。 FRBは今後も金融を引き締め、労働市場の加熱を抑えなければならなくなるだろう。 それに伴い、米国の金利は上昇するだろう。 その一方で、日本銀行が金融政策を正常化するには時間がかかる。 日米の金利差は拡大し、ドル高・円安の流れが一段と強まる可能性は高い。