「円安株高」アベノミクスの功罪 安倍元総理の経済ブレーンに聞く【WBS】
岸田政権は経済政策にシフトし、新たな対策を考えているようです。その経済の課題はどこにあるのでしょうか、アベノミクスと比較してみました。第2次安倍政権発足の前の株価は1万80円でした。2013年4月に日銀が「異次元の金融緩和」を導入すると、株価は上昇していきます。そして途中には2度の消費税の引き上げがありましたが、7年8ヵ月の在任期間で株価は倍以上になっています。
現在、歴史的な円安や経済の減速懸念で株価は伸び悩んでいます。WBSはアベノミクスの経済ブレーンだった浜田宏一氏に話を聞きました。先行き不透明な日本経済はどのように映っているのでしょうか。
2012年末に発足した第2次安倍政権。当時は為替が1ドル85円台と今とは逆に円高に苦しんでいた時期。物価も賃金も上がらないデフレが課題でした。そこで打ち出したのが、3本の矢からなる経済政策「アベノミクス」です。
円高やデフレから脱却するための第1の矢として大胆な金融政策を推進。日銀総裁に新たに黒田氏を任命し、異次元緩和がスタートしました。その結果、為替は一気に円安が進み125円台に。輸出企業の業績が回復したことなどから日経平均株価は2倍以上に上昇しました。
また円安はインバウンド消費も刺激。海外からの訪日客は急増し、2019年には3000万人を突破しました。
総理在任時の2013年にWBSに出演した安倍氏は「この道しかない。10年間ずっとだめだった。ピクリとも動かなかったいろいろな指数が動くようになった。だから私たちはこの道を行くしかない」と話しました。
このアベノミクスの指南役だったのはアメリカのエール大学名誉教授、浜田宏一氏です。
安部元総理の強みは何だったのか尋ねると、浜田氏は「自分の頭で考えて『円高を解消する場合には金融政策を使わないといけない』と。主体性を持ち政策を執行したところが、安倍政治のプラスの面」と話します。
浜田氏はアベノミクスの効果について「金融政策で円高を解消して、ともかく"雇用"を増やすということで、雇用者はネット(正味)で500万人増えた。東京ドームが5万人とすれば100個作った。これは大きな効果」と語ります。
アベノミクスの7年で雇用者数は500万人増加。失業率も4%台から2%台まで回復しました。一方で、物価と賃金がともに上昇する経済の好循環はいまだに見えていません。
また、安倍政権は2014年と2019年の2度にわたり消費税増税を実行。賃金が上がらない中での増税に国民からは反発も起きました。さらに企業への恩恵となっていた円安も1ドル140円を超え、輸入物価の高騰を招くという弊害が出てきています。
こうした課題にどう立ち向かえばいいのか。浜田氏はイノベーションを起こすための人材育成がカギだといいます。
「『自分で違ったことをやろう』という経営者としても、創業者としても最も重要なところを日本の教育は教えていないのではないか。できる学生をちゃんと育てることが今後必要になってくる」(浜田氏)
※ワールドビジネスサテライト