「手製銃で要人襲撃」全国の警察が想定せず、「ネットに製法」軽視…警察庁検証
、全国の警察がこれまで手製銃による要人襲撃を想定していなかったと、月内にまとめる警護の検証結果に盛り込む方針を固めた。インターネット上で銃の作り方などの有害情報を容易に入手できることへの意識が希薄だったとして、対応の強化を検討している。 【動画】一発目と二発目の銃撃の間、安倍氏の背後のSPたちは
手製銃などの製造が広がれば、人を傷つける銃器犯罪が増え、要人警護だけでなく治安全般に影響が出かねない。警察庁は、有害サイトへの対応や、火薬の原料となる薬品の管理強化などについて、所管省庁などと協議していく考えだ。
警察の銃撃対策は従来、暴力団や右翼の構成員など組織に属する人物が既製の拳銃を使うケースを想定していた。だが、安倍氏を銃撃した無職の山上徹也容疑者(41)(鑑定留置中)は、ネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」で銃の作り方を学び、火薬もネットで購入した薬品をもとに自作したと供述した。
(写真:読売新聞)
警察庁はこうした点を重視し、これまでの要人警護の想定や担当者の認識を確認した。その結果、ネットに氾濫する情報をもとに誰でも銃などの武器を作れてしまうことへの意識が薄く、手製銃による要人襲撃を想定していなかったことが判明した。
ネット上では近年、銃や爆発物の作り方を指南するサイトが存在するほか、個人が3Dプリンターで銃を自作したケースも確認されている。警察庁はこうした現状への対応が不十分だったことが事件の背景の一つになったとみており、警察幹部は「時代認識が甘く、『現代型』の銃器犯罪に無警戒だった」と話す。
警察庁によると、銃の作り方などを紹介するサイトは違法性の線引きが難しい上、海外サーバーを用いるケースも多く、銃刀法などに基づく取り締まりは容易ではない。外部からの通報などで把握しても、明らかに違法でない限り、サイト管理者に削除要請を行うことしかできなかった。
火薬や爆発物の原料となる薬品についても、大量購入者がいた場合に通報するよう販売業者に求めているが、義務ではない。
警察庁は安倍氏の事件後、検証チームを設置し、警護の問題点の洗い出しを進めている。これまでの検証で、警察庁が警護計画をチェックせず県警任せにしていたことや、警護を担当した奈良県警が慣例で制服警察官を配置していなかったことなどが判明している。