「日銀のエリート」雨宮正佳氏が総裁に就任した場合、日本経済に起きる「これだけのこと」
日銀の黒田東彦総裁の後任人事について、政府が雨宮正佳副総裁に打診したと報道されている。あくまで報道ベースなので最終的に人事がどうなるのかは現時点では分からないが、雨宮氏は次期総裁の最有力候補とされてきた人物である。岸田政権にとって雨宮氏が総裁になるのがもっとも都合よいからなのだが、それはなぜだろうか。 【写真】125万人が忘れている「申請しないともらえない年金」をご存知ですか
「日銀エリート」の雨宮氏
〔PHOTO〕Gettyimages
黒田氏は4月8日に日銀総裁の任期満了を迎える。黒田氏はアベノミクスの立役者の一人であり、総裁として大規模な緩和策を主導してきた。一連の政策はデフレ脱却に向けて、一定の効果はあったものの、肝心の実体経済はまったく良くなっておらず、昨年から急激に進んだ物価上昇によって国民生活は苦しくなる一方である。 10年にわたる緩和策の結果、銀行の収益が悪化したり、不動産に過剰にマネーが回るなど、弊害が目立つようになってきた。加えて黒田体制の日銀は、本来の守備範囲である短期金利のみならず、長期金利も意図的に低く抑えるという長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)という特殊な政策を実施してきた。 長期金利を低い水準で維持するため、日銀は巨額の国債買い入れを余儀なくされており、すでに政府が発行する国債の半分以上を日銀が保有する異常事態となっている(米国は10%台、欧州は最大で30%程度)。 これ以上、大規模緩和策を継続するのは危険であり、昨年あたりから、多くの専門家が出口を模索する必要があると指摘するようになっていた。今回の次期総裁人事はこうした状況で検討が進められている。 雨宮氏は東京大学経済学部を卒業後、日銀に入行。主に企画畑を歩み、2018年からは副総裁として黒田氏を支えてきた典型的な日銀エリートである。ではなぜ、政府から見て雨宮氏は次期総裁として都合がよいのだろうか。 上記のように雨宮氏は日銀出身である。これまで日銀総裁は慣例として日銀出身者と財務省出身者のたすき掛け人事が続いてきた。黒田氏は安倍元首相に強く請われて総裁になったので政治色が強く、一般的な財務省出身者とは状況が異なる。それでも形式的に見れば、日銀出身だった白川方明総裁の後任として総裁になったので、たすき掛け人事の一貫と見なすこともできる。慣例人事を踏襲した方が組織的な軋轢は少ないので、その点では日銀出身者の方が望ましい