「総合経済対策39兆円」でも生活が楽になると到底実感できない理由

2022年11月11日

 10月28日、岸田文雄首相は、政府与党政策懇談会で「総合経済対策に盛り込まれた各施策を国民の皆様の手元にしっかり届け、生活を支えていることを実感していただくために、全力を尽くしてまいります」と述べ、その日の夕方、財政支出約39兆円という総合経済対策を発表した。その記者会見では、電気料金等に対する質問に対し「総額6兆円、1家族当たり4.5万円の支援を行います。こうした効果的な激変緩和措置を講ずることで、物価高から国民の皆さんの生活を守ります」と自信満々に答えている。しかし、物価高騰対策を見る限り「政府が生活を支えてくれる」「物価高から生活を守ってくれる」とは到底実感できない内容と言わざるを得ない。(消費者問題研究所代表 垣田達哉) ● 電気料金の支援は 来春値上げの肩代わり  総合経済対策によって「物価高から生活を守ってくれる」と実感できない典型的なものが電気料金だ。岸田首相の発表から4日後の11月1日、東京電力が2012年以来の料金の値上げを検討しているというニュースが飛び込んできた。来年春頃からというだけで、いつからいくら値上げするのかはわからないが、このニュースを聞いた時「物価高から生活を守るといいながら、要するに東京電力がこれから値上げする分を補助するだけじゃないか」と気が付いた人も多いのではないだろうか。  確かに、首相官邸が公開している資料(新たな経済対策が目指すもの)では、電気料金について「来春の値上がり分を肩代わり」と小さく記載されている。岸田首相も、記者会見では「エネルギー価格について、その上昇分を直接目に見える形で抑制する」と述べているが、この上昇分を今年すでに行われた値上げ分のことだと思っていた人は多いのではないだろうか。

 来年の値上げ分の肩代わりとなると、一般家庭にすれば物価高騰対策が実施されたという実感を持つことはできないだろう。なぜなら、今の電気料金が安くなるわけではなく、来年の春からの電気料金の支出が増えないだけなのだ。しかも、国の負担は1キロワット時当たり7円なので、今年のように毎月値上がりする(1キロワット時の料金が上がる)ことになれば、支出は増えるのだ。  生活者目線で言えば「生活が少し楽になった」と感じること、つまり料金などの物価が下がることで支出が減らなければ、国が生活を支えてくれている、守ってくれているとは実感できないだろう。 ● 裕福な家庭ほど 恩恵を受ける仕組み  今回の家計支援対策は、標準世帯で電気・ガス・ガソリン合計で4万5000円(来年1月~9月までの9カ月間計)と試算されている。例えば、3エネルギー合計で標準世帯より2倍使用している世帯は9万円が軽減される。  エネルギーを節約している家庭やエネルギーの使用量が少ない低所得者層よりも、使用量が多い家庭の方が軽減される金額は大きくなる。どちらかといえば、低所得者層より高所得者層の方が、エネルギーの使用量は多いだろう。  さらに、都市ガス料金は、国の負担が1立方メートル当たり900円と決まっているが、地方で使用率の高いLPガス(プロパンガス)は、どんな対策にするのか決まっていない。都市ガスと違って、LPガスの販売会社は1万7000社以上ある。ガソリンのように、国が負担した金額が消費者に全額還元されないことも予想される。  電気や都市ガスは「国の負担額が目に見えるようにする」ので実感を味わうことができると言うが、LPガスはどんな見せ方をしてくれるのだろうか。  もう一つ生活を守ってくれるという言葉に実感が湧かないのが、誰に対する負担軽減策なのかということだ。  2020年に家計支援として給付された特別定額給付金は、1人当たり10万円だった。4人家族であれば40万円が支給されている。「高所得者に対して給付する必要はない」という意見もあったが、低所得者層に緊急的に支給するために、所得制限をするよりは迅速を優先したことは当然の措置だろう。  定額給付金は、40万円の現金給付の場合、年収1000万円の4人家族の家庭にすれば収入の4%にしかすぎないが、500万円の家庭は8%になる。しかも、その使い道は自由である。各家庭によって、負担を軽減してほしい対象は違うだろう。一番負担を軽減してほしい食料ではなく、エネルギーだけに絞った経済対策は、エネルギー使用量の多い高所得者優遇と言わざるを得ない。

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