【為替下期展望】円は150円まで下落も-米景気次第で反転の可能性
(ブルームバーグ): 2022年度下期(22年10月-23年3月)の円相場は軟調で、対ドルで150円をうかがう水準まで下落するとの見方も出ている。
政府・日本銀行の円買い介入への警戒があるものの、引き続き内外金融政策の方向性の違いや日本の貿易収支悪化が円売り圧力につながるとみられている。ただ、金融引き締めで米景気が悪化すれば米金利が低下してドルは下落、年度末にかけて円が強含む可能性も意識されている。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは円相場の見通しについて、日米金利差の拡大と日本の貿易赤字による実需のドル不足が明確になっており「ストーリーは変わっていない」という。JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長も年内は円安トレンドが続き「年末年始にかけて円は対ドルで1998年の安値147円60銭台を超えて150円まで下がることはあり得る」とみている。
今月20-21日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.75ポイント引き上げ、3.00%-3.25%とした。併せて発表された金利予測分布図(ドットチャート)では政策金利が4%を超えて引き上げられる可能性が示された。一方、日銀は21-22日の金融政策決定会合で現行の金融政策を維持。また、政策金利の指針についても緩和的なスタンスを維持した。
日本の8月の貿易赤字は2兆8173億円と、比較可能な1979年以降で最大だった2014年1月(2兆7951億円)を上回った。JPモルガンの佐々木氏は、「液化天然ガスや石炭のドル建て輸入価格の動向次第ではさらに赤字が拡大する可能性がある」と指摘する。
政府・日銀は22日、一時1ドル=145円90銭まで円安が進行したことを受けて、1998年以来となる円買い介入を実施した。この介入を受けて、145円台後半だった円相場は一時140円台前半まで円高に振れた。市場推計では約3兆6000億円規模になったとされている。