〝脱デフレ〟岸田首相は失敗を繰り返すな 回復軌道に乗るまで金融緩和と不退転の決意を明確に

2023年01月10日

【お金は知っている】 令和5年がスタートした。「ことしこそは日本再生元年」と賀状に書いたが、気がかりなのは財政と金融政策である。政府と日銀は足並みをそろえ、内需がしっかりとした回復軌道に乗るまでは、金融緩和と機動的な財政出動を堅持する不退転の決意を明確に打ち出すべきだ。 【グラフでみる】平均年収と賃金が増加した人の比率 実際はどうか。財政のほうは、岸田文雄政権が2年後以降の防衛増税を企図している。新年度政府予算案も緊縮路線の上にある。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁のほうは昨年12月20日に長期金利の変動許容幅を従来の0・25%程度から0・5%程度に広げたが、アベノミクスの主柱である異次元金融緩和解体の始まりで、利上げに転じるとの憶測を招いてしまった。 増税と利上げは、だれでも分かる通り、民間の景気回復期待を萎えさせる。来春闘での賃上げ気運に冷水を浴びせることになる。 財政面でも防衛費増額財源確保のため、岸田政権は来年度当初予算から引き締め気味の財政運営に転じようとしている。同12月23日に閣議決定した予算案について、財務官僚に誘導されているメディアは「一般会計総額が過去最大の114兆3812億円」(24日付日経新聞朝刊)というふうに、あたかも拡張型のように一斉に報じたが、無知蒙昧の極みだ。政府案の税および税外収入合計は今年度当初予算に比べて8兆円以上の増収だが、国債費を除く歳出は5・8兆円余増で、この差額が民間需要を奪う緊縮効果となりかねない。しかも防衛増税が先に待ちかまえている。 黒田総裁は長期金利上限引き上げについて、「利上げではない」と盛んに強調するが、市場の長期金利上昇圧力を払拭できない。「量」の面でも異次元緩和の「軌道修正」の印象が否めない。日銀資金発行残高が縮小基調にあるからだ。 市場の思惑を大きく突き動かす背景は、黒田総裁が4月に任期終了を迎えることだ。後任候補で有力視されるのは雨宮正佳副総裁ら日銀生え抜き組だが、日銀は伝統的に引き締めに傾斜し、緩和に後ろ向きである。現時点はリフレ派が優勢だが、黒田後は少数派に転じかねない。そうなると、メガバンクなどの不満が強いマイナス金利を止め、利上げが進みやすくなる。 一般論では借り手が得するマイナス金利は異常であり、正常化しなければならない。だが、日本経済は高インフレの米欧と違ってデフレ圧力が強いままだ。マイナス金利解除を号砲に、円高が急激に進行しかねない。現に、今回の長期金利上限引き上げのみの調整だけで、円買いラッシュが起きた。利上げと円高は共にデフレ圧力となり、企業の設備投資や家計の消費意欲をそぐ。 今は、円安が追い風になって設備投資が上向き、賃上げのコンセンサスも生まれつつある。これまでの脱デフレの好機では、政府と日銀が緊縮財政または金融引き締めで壊した。とりわけ岸田首相は繰り返す愚を肝に銘じるべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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