かたくなな日銀・黒田総裁にイラ立つ岸田官邸…為替単独介入決断の背景(小林佳樹)
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「黒田総裁が頑なに金融緩和の維持を主張して譲らない。(為替介入について)米国の理解も得られたので、とりあえず単独介入でしのごうということです。145円が介入ラインとなったが、いつまでもつか......」
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政府関係者は、今回の政府・日銀による約24年ぶりの円買い・ドル売り介入についてこう指摘する。
21.22日の日銀の金融政策決定会合を前に官邸は黒田総裁の姿勢にいら立っていた。3月初めまで1ドル=115円程度で安定していた円相場は足元、140円台まで下落していた。半年間で30円も円安が進行し、輸入物価の急騰から消費者物価(生鮮食料品を除く)の上昇率は2.8%まで高まっている。
各種商品価格の値上げは国民生活を直撃、旧統一教会問題も加わり、岸田政権の支持率は急落している。にもかかわらず黒田総裁は「経済は回復途上にあり、金融緩和を継続することが適当」と譲らない。とくに米FRBは21日に通常の3倍、0.75%の利上げに踏み切った。「このまま日銀が動かなければ、岸田は黒田になめられていることになる」(政府関係者)との危機感が高まっていた。
■「いつでもやる用意がある」と突っ込んだ神田財務官
「伝家の宝刀」は、そうした黒田氏への一撃となった。日銀が大規模な金融緩和の維持を決めたのは22日正午近く。この決定を受け円相場は145円台に突入した。午後1時30分過ぎには財務省の神田真人財務官は記者団に「(為替介入は)スタンバイの状態と考えていい。いつでもやる用意がある」と突っ込んだ。
そして午後3時30分から黒田総裁が今回の金融政策決定会合に関する記者会見を開き「当面、金利を引き上げることはない」「必要であれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」と言明すると、午後4時ごろに円相場は145円90銭前後と146円が目前に迫った。
直後の午後5時ごろ、財務省はついに3兆円超の円買い介入に踏み切った。
「金融緩和の維持と円買い介入は矛盾する政策。ちぐはぐな政策に踏み込んだのは明らかな黒田日銀の決定に官邸がノーを突き付けたようなもの。記者会見で黒田氏は赤っ恥をかいた」(市場関係者)といえる。
訪米中の岸田首相は22日のニューヨークの内外記者会見で為替介入に言及し、「過度な変動に対しては断固として必要な対応をとりたい」と強調した。介入により円相場は140円まで戻したが、FRBは金利引き上げの手を緩める気配はない。日米金利差から再び円安に振れる可能性が高い。円相場はふたたび介入水準の145円に近づいている。「時間稼ぎの介入」はいつまでもつだろうか。
(小林佳樹/金融ジャーナリスト)