ついにリセッションがやって来る...意図的にもたらされる「不景気」に備えよ
アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備理事会)が大幅な利上げ継続を決断したことで、世界経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性が高まってきた。もしそのような事態となれば、日本経済への影響も極めて大きなものとなるだろう。
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アメリカや欧州では10%近いインフレが続いており、各国にとってインフレ抑制は最優先課題となっている。FRBは経済学のセオリーに従い、金利を引き上げて物価を抑制しようと試みている。金利を上げれば、企業は銀行からお金を借りにくくなり、景気にとって逆風となる。インフレ抑制とは、意図的に不景気にして物価を抑えることと同義であり、インフレ抑制に成功すれば、当然の結果として景気は悪くなる。
現在、アメリカの政策金利は4%に達しており、FRBは金利の上昇幅を縮小させる可能性は示唆したものの、金利そのものについては、さらに高い水準までの引き上げを示唆している。短期金利である政策金利が4%台となった今、長期金利が4%台ということはあり得ないので、市場では長期金利が5~6%台に上昇する可能性について議論され始めている。
アメリカの産業界や議会は景気悪化を懸念し、FRBに対して金利の引き上げをやめるよう圧力をかけている。もしFRBがこれを受け入れず、予定どおり金利の引き上げを進めた場合、インフレは収まる一方、リセッションに陥る可能性は格段に高まる。アメリカがくしゃみをすれば、日本が風邪を引くというのはよく知られた事実であり、来年の日本経済は相当な覚悟が必要となるかもしれない。
■従来の経済危機よりも対応は難しい
これまでの時代とは異なり、今回、予想されている景気後退は非常に厄介である。景気が後退した場合、通常は大型の財政出動を実施するのがセオリーである。だが、慢性的な品不足と高コスト状態が続くなか、需要を拡大する政策を行えば、せっかく利上げで沈静化させたインフレを再発させてしまう危険性がある。
金利の引き上げでインフレが収まったとしても、物価上昇がこれ以上、進むことを回避できただけであり、高くなった物価が元に戻るわけではない。つまり当分の間、高コストと供給制限が続くと考えたほうがよい。
こうした状況下で景気対策を効果的に実施するためには、IT化の促進など、経済の体質転換を促す産業政策をセットにする必要がある。つまり、単純なバラまき型の需要拡大策はご法度なのだ。
さらに悪いシナリオとしては、FRBが市場や産業界からの要求を受け入れて利上げペースを鈍化させてしまい、かえってインフレを悪化させることも十分にあり得る。1970年代のアメリカはまさにこのパターンであり、最終的に政策金利を20%以上に引き上げるという荒療治でインフレを退治したものの、アメリカ経済は恐慌寸前まで追い込まれた。
ちなみにアメリカがリセッションに陥った場合、過度な円安が修正される可能性は高くなるが、一気に円高に戻す展開は考えにくい。為替は相対的な取引であり、ドルが下落するということは、円やユーロが買われることを意味する。アメリカの景気が悪化すれば、日本や欧州の経済がさらに悪化するのは確実であり、アメリカ以上に不景気になる国の通貨が積極的に買われる保証はどこにもない。