アングル:中国株式上場巡る一段の規制緩和、IPO拡大は望み薄か

2023年02月06日

[上海 3日 ロイター] - 中国政府がこのほど株式上場を巡る一段の規制緩和方針を打ち出したが、新規株式公開(IPO)件数が一気に増える公算は乏しい――。銀行関係者からはこうした声が聞かれる。政治問題や国家安全保障に基づく当局の介入姿勢が維持され、手続きの遅れや中止につながりかねないからだ。 中国証券監督管理委員会(証監会)は2月1日、試験的に導入している登録方式による米国型のIPO制度を全ての国内証券取引所に拡大する規則改正案を発表した。狙いは上場手続きと企業の資金調達を迅速化することにある。 現在、中国の主力銘柄が取引されているメーンボードに上場するには、証監会の承認が不可欠で時間がかかるし、公開価格も規制される。しかしこの新しいやり方になると、上場したい企業は中国の各証取による情報開示に焦点を当てたチェックを通過するだけで済む。 国営メディアやアナリストらは、こうした改革は中国のIPO市場をより包摂的で透明性と効率性が高い存在に移行させる重要な節目だと称賛している。 しかし銀行関係者は、今後もIPO手続きは総じて当局の意向に左右される状況は変わらないのが現実だと主張する。その当局は、株式市場をあくまでも中国の国際社会における主導権争いや中華復興のための道具とみなしており、今回の規則改正案でも証監会の役割として、上場案件を確実に政府の幅広い産業政策の趣旨に沿うようにするという方針がうたわれている。 中国企業の米国上場を手助けしている専門投資銀行TRSDキャピタルのパートナー、テレンス・リン氏は「中国の仕組みでは、政府がIPOの方向性を指図する。申請案件は国家的な政策の見地から審査される」と指摘した。 これまでにIPOを期待されていた30社余りが証監会の登録手続きを打ち切り、試験導入された登録方式のIPO制度で実施されている証取のチェック過程でも数百社が上場計画を撤回している。 中国系証券会社のあるバンカーは、中国のIPOは形式的に登録方式であっても、事実上は政府の承認がなお必要だと言い切る。「当該企業の規模ないし技術革新性が不十分なら、国内上場(の承認を得るの)はまず不可能だ。庇護主義(パターナリズム)と政治力学が新しいIPO制度でも重要な役割を担い続ける」という。 <当初目的と矛盾> 登録方式のIPOは当初、2019年に立ち上げられた上海の科創板(スター・マーケット)に導入された。科創板は、習近平国家主席の肝いりで設立され、米国との緊張関係が高まる中で自国のハイテク企業の資金調達力を確保する目的があった。 その後登録方式IPOの試験運用は、深センの創業板(チャイネクスト)と北京証券取引所にも広がり、今回は上海と深センのメーンボードにも適用する考えが示された格好だ。 証監会は2日、自らの役割を明確化。資本市場において中国共産党の指導力を強化し、IPO改革を進める上で市場機能と政府の役割を融合させると強調した。 これについて資本市場専門のある弁護士は「つまり証監会が依然として上場希望企業が適切なセクターに属しているかどうかの最終決定権を持っているということだ」と述べた。 登録方式IPOでも政府が介入した最も典型的な例として挙げられるのは、2020年終盤に上場直前だったアント・グループが上海と香港におけるIPOの中止に追い込まれた件だ。 別の中国系証券会社のバンカーは「登録方式IPOでより多くの種類の企業が上場可能となり、市場機能が高まると思っていた。しかしIPOのスポンサーとして、企業に対する規制当局の監視は厳しくなる一方というのがわれわれの実感だ。これは当初の改革の目的に反している」と苦言を呈した。 

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