インタビュー:ドルは来年125―135円、日本の弱さ改善せず=清水学習院大教授

2022年11月29日

[東京 29日 ロイター] - 学習院大学の清水順子教授は29日、ロイターのインタビューに応じ、為替市場で急速な円安が進行する中で、生産性や成長率の低さ、構造改革の進展の遅れといった日本のネガティブな側面が露呈したと指摘した。こうした点が改善されていない以上、ドル/円が以前の105―115円のレンジに戻ることは考えにくく、来年は125円―135円程度で推移するとみていると述べた。 清水氏の専門は国際金融論。旧日本興業銀行・ロンドン支店などで為替ディーラーを務め、1985年のプラザ合意や92年のポンド危機をマーケット参加者として経験した。 清水氏は、ドル/円の上昇の直接的な理由は日米の金融政策の違いだったが、上昇の過程で「日本経済の良くないところがさらけ出された」と語った。具体的には低い生産性や成長率、規制緩和や構造改革が進んでいないことなどを挙げた。どれも「今のところ、全く改善が見られていない」と話し、今年2月まで続いた105―115円への回帰は難しいとの見方を示した。 <為替介入を評価> 政府・日銀は9月に円買い介入に踏み切った。清水氏はこれまで、投機筋のさらなる円売りを誘発しかねないなどの理由から介入には反対の立場だったが、今回の為替介入は「非常に上手に実施した」と評価した。 9月の円買い介入は黒田東彦日銀総裁が金融緩和の継続を明言した直後のタイミングで実施されたが「中央銀行と通貨当局で全く真逆のことをするというのは今までなく、非常にサプライズとなった」と述べた。 10月以降、政府は介入しても直後には公表しない「覆面介入」にスタンスを転換した。清水氏は、ドルに対してさまざまな通貨が急速に下落する中で、日本だけでなく諸外国の通貨当局が介入していたのではないかとの見方を示した。覆面介入でも、財務省の公表データで介入の有無は確認可能であり「こうした情報の出方も含め、非常にうまく実施したと思う」と話した。 日銀の金融緩和については、足元の物価高が輸入コスト上昇によるもので、内需の強さがもたらしているものではないため「国内的に考えればこうせざるを得ないとつくづく思う」と理解を示した。「円安のために金融政策を変えるとか、利上げするのは根本的に間違っている」と語った。 ただ「目標としている物価のターゲットが一般の家計にとって分かりにくい」と指摘。総務省が公表している消費者物価指数には、携帯電話通信料の大幅値下げや政府の観光振興策「全国旅行支援」などが影響して実際の姿が見えづらいため、日銀は着眼点を整理するべきだと述べた。 <円安で国内回帰なら「競争力の高い産業を」> 清水氏は、横浜国立大学の佐藤清隆教授らとともにアジア・欧州・北米・オセアニア諸国を中心に産業別の生産者物価指数を収集し、産業別の実質実効為替レートを算出・公表している。特定の産業の実質実効為替レートが各国間で比較可能になる特徴がある。 清水氏によると、輸送用機器は中国・ドイツ・米国・韓国・台湾より実質実効為替レートが低く競争力が最も高い。一般機械も日本の競争相手となる米独よりもレートが低い。一方で、電気機器や光学機器は円安が進む下でも韓国より競争力が劣っている。清水氏は「産業を国内回帰させるなら、より競争力の高いものを日本で作って輸出していくことをしていかなければいけない」と指摘。例えば、欧米の大手自動車メーカーのアジアの生産拠点を日本に誘致することも考えるべきだと述べた。 (和田崇彦)

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