インフレは国民にとって「事実上の増税」だと理解していますか?

2022年08月24日

<インフレでは人々の預金と国の借金の「価値」がともに目減りするため、増税と全く同じ効果をもたらすが、多くの国民はこの仕組みを見逃している>【加谷珪一(経済評論家)】

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岸田文雄首相が小麦の政府売り渡し価格を据え置くよう指示するなど、インフレ対策に躍起になっている。賃金が上がらないなかでの物価高騰は生活を直撃する現実が明らかとなり、多くの国民がインフレの怖さについて認識するようになった。だが、インフレというのは「事実上の増税」であるという、さらに厳しい現実については、まだ多くの人がピンときていないのではないだろうか。 ●日本だけ給料が上がらない謎...その原因をはっきり示す4つのグラフ 通常、税金というのは所得に対して課税したり(所得税)、消費に対して課税する(消費税)というやり方で徴収が行われる。税金を取られることを喜ぶ人はいないので、当然のことながら増税に対する反発の声は大きい。だがインフレによる継続的な物価上昇は、増税と全く同じ効果をもたらすものの、その仕組みについてはあまり知られていない。 もしインフレが進み、10年間で物価が2倍に上昇したと仮定すると、今年100万円だった自動車は10年後には200万円になる。だが、インフレが進んだからといって銀行の預金額は変化しないので、100万円の預金は10年後も100万円のままである(利子分は除く)。今なら100万円の預金で自動車を1台購入できるが、10年後には2倍のお金を出さないと自動車は購入できなくなる。 要するにインフレ時には、現金や預金を持っていると損してしまうという話だが、逆にトクをするのが借金である。今、100万円を借りて、10年後に返済する場合、物価が2倍になったとしても、返済する額は100万円のままである。 ■インフレが起きれば政府の借金は実質的に減少する 今、100万円を借りて、物価上昇に合わせて価値が上がる資産を購入すれば、お金を借りた人は100万円だけ返せばよいので、大きな利益を得ることができる。そして、社会において最も高額な借金を抱えた経済主体の1つが政府である。 現在、日本政府は1000兆円を超える借金を抱えており、お金の原資は国民の預金であるが、もしインフレによって物価が2倍になれば、政府の借金は実質的に半減する。この時、国民の預金も価値が半減しているので、事実上、国民の預金から多額の税金を徴収し、政府の借金返済に充てたのと全く同じ効果が得られる。 税金という形で税務署にお金は支払っていないものの、これは預金に対する課税と同じなので、経済学の世界ではインフレによる政務債務の削減について「インフレ課税」と呼ぶこともある。 もし物価上昇を政府が放置し、仮に物価が2倍になれば、国民から500兆円の税金を徴収したことと同じであり、消費税に換算すると、20年分以上に相当する莫大な金額となる。消費税の増税には大きな反対の声が寄せられるが、インフレによる事実上の課税については、桁外れな巨額増税であるにもかかわらず、感情的な反発の声はあまり聞かれない。 インフレと賃金上昇が同じペースなら国民生活にそれほど大きな影響は及ばないとされているが、これはあくまでも給与というフローに限った話である。預金というストックについては、インフレが進めば問答無用で価値が毀損し、事実上の税金として作用する現実について忘れてはならない。こうした「課税」を避けるには、不動産など物価に合わせて価値が上がる資産を保有しておく必要がある。

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