コロナ禍の消費抑制・高齢化による貯蓄減少…日本のインフレの行方を読む【経済学者が解説】

2022年12月27日

先般の歴史的な円安・急速な円高への揺り戻しは記憶に新しいところですが、これらはなぜ起こったのでしょうか。そして、今後の展開はどうなるのでしょうか。米ドル・ユーロ・円に共通する「2%のインフレ目標」の意味と効果を中心に読み解きながら、今後のインフレの状況を推察します。

インフレ目標で使用する消費者物価指数の「測定誤差」

現在は米ドル・ユーロ・円には、2%のインフレ目標が設定されています。東京大学の渡辺努教授によると、これにより、世界の主要通貨であるドルとユーロと円の間の為替相場が大きく変動しない仕掛けとなっています※1。そこで、このインフレ目標について検討します。 ※1 渡辺努『物価とはなにか』講談社、2022年、p.102 インフレ目標とは、中央銀行がインフレ率に一定の数値目標を掲げ、市中の通貨量を調節することにより、緩やかなインフレを誘導し、安定した経済成長につなげる金融政策を指します。日本銀行は2013年に、デフレ対策として2%のインフレ目標を導入しました。 このインフレ目標で使用している「消費者物価指数」は、実際より高く算出される傾向があるのですが、これを物価指数の「測定誤差」と呼びます。

中央銀行が留意する、目標インフレ率設定のポイント

みずほ証券と一橋大学によると、物価指数の測定誤差とは、消費者物価指数などに基づきインフレ率を算出する際、実際のインフレ率よりも上方バイアスをもって算出されやすいことを意味します。 消費者物価指数は「ラスパイレス指数」という方法で計算され、商品の購入割合が基準時の割合で固定されます。この方法では、節約のために高い価格の商品から安い価格の商品へと人々の購入内容が変化しても、商品の内容が基準時の割合で固定されるため、価格の高い商品を買い続けたとして計算され、物価指数に上方バイアスが生じます。 このことを考慮して、中央銀行が目標インフレ率を設定する際、消費者物価指数などで測られたインフレ率を0%より若干高めに設定して金融政策運営を行うと、実際のインフレ率は0%に近く誘導できると考えられます。 コロンビア大学のD.ワインシュタイン教授と先述の渡辺努教授によると、この上方バイアスは、平均値で0.6%(標準偏差0.9%)と推定されています※2。つまり、発表された物価上昇率は、実際の物価上昇率よりも1.5%以上高い場合が10回に1~2回の確率であり得る一方、実際の値より0.3%低い場合も同じ確率であり得ます。 ※2 D.ワインシュタイン・渡辺 「消費者物価、過信は禁物」 (2022年12月22日入手)

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