トランプが次期大統領になったら「本当に常軌を逸したことが始まる」 人事、軍掌握、対ロシア
ドナルド・トランプは大統領への返り咲きを諦めるのではないか――そんな見方は、最近の動向を見る限り打ち砕かれたと言えそうだ。 【写真】ポルノ女優から受付嬢まで、トランプの性スキャンダルを告発した美女たち 2020年11月の大統領選で敗れて2年。前大統領は、今も以前と変わらず派手な政治集会を重ねている。 11月8日の中間選挙前には、共和党の候補者を応援するためというのを建前に、実質的には自分が主役のように振る舞い、大統領時代の成果を誇ったり、さまざまな不満をぶちまけたりしていた。 メディアで取り上げられる機会にも事欠かない。この10月には、昨年1月の連邦議会襲撃事件を調査している下院特別委員会がトランプに証言と書類提出を求める召喚状を発した。8月には、機密書類の持ち出し疑惑に関連して、FBIがフロリダ州にあるトランプの別荘マールアラーゴを家宅捜索している。 ほかにも、毎日のようにトランプの法的トラブルが報じられている。
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中間選挙で共和党は予想外の苦戦を強いられたが、それでもトランプは11月15日に、2024年の大統領選への再出馬を表明するとみられる。法的トラブルなどどこ吹く風、共和党支持者のトランプ人気は根強く、刑事告発されたとしても、支持はほとんど揺らがないだろう。 FBIによる家宅捜索後の支持者の反応を見ると、むしろ支持がいっそう強まる可能性すらある。中間選挙前のある世論調査は、大統領選が共和党のトランプと民主党のジョー・バイデン大統領の対決になった場合、トランプが勝つ見通しを示していた。 2期目のトランプ政権が発足した場合、大統領に復帰したトランプはどのような行動を取るのか。民主党支持者と無党派層を中心に、有権者の61%がトランプの再出馬を望んでいないことを考えると、多くの人が戦々恐々としながら彼の動向を注視している。 トランプは最近の演説でも、2017年の大統領就任演説さながらに、おどろおどろしい話を繰り返していた。進歩派の民主党員と背後で糸を引く勢力により、アメリカが破滅させられようとしている、というのだ。 「外部の脅威も極めて大きいが、最大の脅威は今もやはり国内の邪悪な連中だ」などと述べている。 トランプが2期目にどのような政策を推進するかは、まだ推測の域を出ない(そもそもトランプが政策に関心を持っているかも疑わしい)。それでも、本誌が過去と現在の側近たちに話を聞いたところ、おおよその方向性が見えてきた。 まず、1期目ではトランプのブレーキ役になり得る人物も一部の要職に起用したが、今度は自分に忠実な人物で人事を固めそうだ。 また、権力掌握を目的に、軍に対するコントロールを強化するだろう。そして、行政サービスを大幅に縮小し、自身の支持層が抱く価値観に沿った政策を打ち出す可能性が高い。 黒人、性的少数者、アメリカ先住民などの投票権をますます制約しようとすることも予想できる。政治的な敵対勢力に嫌がらせをしたり、ひどい場合は投獄したりするために、FBIや軍、内国歳入庁(IRS)などを利用することもあり得る。 対外政策も根本から変わりそうだ。ヨーロッパの同盟国に敵対的な態度を取り、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との友好関係を復活させるだろう。 一方、大統領を3期以上務めることを禁止する合衆国憲法のルールなど、アメリカの民主政治の骨格を成す規範も崩壊しかねない。 ひとことで言えば、1期目でおなじみのトランプが帰ってくる。ただし、前回より行動がエスカレートし、しかも好き勝手に振る舞うことを妨げる要素は少なくなる。 「1期目が常軌を逸していたと思っているかもしれないが、本当に常軌を逸したことが始まるのはこれからだ」と、反トランプ派の共和党員らが結成した政治団体「リンカーン・プロジェクト」の共同設立者であるリード・ゲーレンは言う。