バイデン政権の「脱炭素」が招く歴史的〝世界大乱〟 米中間選挙以降に危機 日本も対岸の火事ではない 国際投資アナリスト・大原浩氏が寄稿

2022年10月26日

米国発の世界経済大乱が来るのか。各国がエネルギーや食品価格の上昇などインフレに苦しむなか、ジョー・バイデン政権が「原油価格の安定化」に失敗した上、「脱炭素」という矛盾した政策を掲げていることがさらなる混乱を招くというのだ。国際投資アナリストの大原浩氏は寄稿で、11月の米中間選挙後に本当の危機が訪れる恐れがあり、日本も対岸の火事ではないと指摘する。 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は、11月以降の原油の生産量を1日当たり200万バレル減らすことを決めた。世界需要の約2%に相当する大規模な減産だ。これに対してバイデン米大統領は「短絡的」な決定という認識を示した。 新型コロナのパンデミック(世界的大流行)発生以来、バイデン政権はOPECに大幅な減産をしないように働きかけている。7月には人権問題などで批判も多いサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と面会したが、「増産」の確約を得ることができず、9月に決定した増産も日量10万バレルと「表敬」程度に過ぎなかった。 超大国である米国への「塩対応」の背景には、欧米諸国が意図的に原油価格を引き下げてきたとOPECプラスが判断していることがあると思われる。「やられたらやり返す」ということだ。 OPECプラスの供給能力の問題もある。米民主党政権や欧州各国は「脱炭素」を掲げ、多方面から化石燃料関連企業を締め付けているから、設備投資や増産のための投資も行いにくい。 OPECプラスの協力を得たいのなら「化石燃料に感謝」し、科学的根拠が不明な脱炭素政策を即刻やめるべきだ。そうしないと原油価格はどんどん上昇するだろう。 原油価格の高騰は、大変残念だがOPECプラスの構成員であるロシアに優位に働く。一方、資源大国の米国を除く西側諸国には大打撃となる。その点でバイデン政権の不手際は痛手だ。 バイデン氏は11月8日の中間選挙での人気取りを狙ってバラマキを続けている。次々と繰り出される大型予算や、議会の承認を得ないまま強行しようとしている「学生ローンの徳政令」を見ると必死度がよく分かる。 社会的弱者救済のための支援が必要な場合もあるが、「財政支出」そのものがインフレを引き起こす要因であるということを忘れてはならない。 ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、この冬の欧州のエネルギー危機が心配されているが、むしろ来年の冬の方が厳しいかもしれない。今冬を現在ある備蓄で乗り切っても、来年減った分の備蓄を積み増せる可能性が低いからだ。 化石燃料の不足は化学肥料の生産にもダメージを与える。つまり、食料生産にも危機が及ぶともいえる。 日本の消費者物価の上昇率は現在3%程度で、「2桁ゾーン」に突入しつつある欧米に比べると危機感がまだ薄いが、現在のエネルギー・食糧危機やインフレは「前座」にすぎない。 米中間選挙以降、「真打クラス」の危機がやってくるように思える。見通しが当たってほしくは無いが、2023年は歴史に残る「世界大乱」の年になる可能性が高い。今や資源・エネルギーが「戦略」として極めて重要になっているのだ。 日本のエネルギー自給率は12%ほどしかない上に、原油のほぼすべて、天然ガスの大部分を輸入に頼っている。しかも、原油輸入の中東依存度は優に90%を超え、ロシア産の輸入禁止措置もあり、直近でその比率が上昇している。 資源小国の日本は、中東外交においてバイデン政権のような失策を行える余地は少ない。 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

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