バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ

2022年08月26日

■リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化  8月11日、エストニアとラトビアが中国との経済的な協力枠組みである「中国―中東欧国家合作」(通称「16+1」)から離脱すると発表した。 【地図】一帯一路の回廊案  昨年、リトアニアがこの2カ国に先行してこの枠組みから離脱を表明しており、今回のエストニアとラトビアの決断によって、いわゆるバルト三国の全てが「中国離れ」を進めることになった。  とはいえ、バルト三国のこの決断は時間の問題だった。  2021年2月、新型コロナの流行を受けて2年ぶりに北京で開催された「17+1サミット」(当時はまだリトアニアが参加していたため「17+1」だった。)にもバルト三国は首脳の参加を見送り、高官を派遣するにとどめた。当時から、中国に対して徐々に距離を取っていたわけだ。  その後、周知のとおり、リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化した。台湾をめぐる問題に端を発したものだが、これにロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的な緊張の高まりも複雑に絡む事態になったと考えられる。  共通してロシアへの対抗意識が強いバルト三国が、中国への対応でも連帯を強めたという側面も大きいのではないだろうか。  それにバルト三国は、これまで「16+1」の枠組みを通じて中国から満足な投融資を得ていなかった。将来的にも、欧州連合(EU)が中国に対する圧力を強めている状況の下では、中国からの投融資が増えるとは考えにくい。  貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くないため、バルト三国は中国との枠組みから離脱できたといえよう。

■中東欧に「選択と集中」をかける中国  しかしながら、中国にとってバルト三国の決断が衝撃だったかというと、むしろ想定内だったはずだ。中国は中国で、2021年2月の北京サミット前後から、経済協力の対象を絞ってきた。  具体的にその対象とは、2019年に当時の「17+1」に参加したギリシャを筆頭に、ハンガリーとクロアチア、そしてEU未加盟の西バルカン諸国となる。  2019年9月に就任したミツォキタス首相の下、ギリシャと中国の関係は良好なものとなっている。そうした中で、2021年10月には中国の国有海運最大手、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)がピレウス港に対する出資額を引き上げたほか、習近平政権が抱える「一帯一路」構想につき、両国の協力関係を深化させる旨で合意に達した。  こちらも関係が良好なハンガリーに対しては、中国企業による大型投資が相次いでいる。6月にはパソコン大手の聯想集団(レノボ・グループ)がハンガリーに建てた工場が稼働、8月には電気自動車(EV)用電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)が73億ユーロ(約1兆円)を投じ、ハンガリーにバッテリー工場を建設すると発表した。 中国はハンガリーの首都ブタペストと隣国セルビアの首都ベオグラードを結ぶ鉄道の更新プロジェクトも支援している。また建設大手、中国交通建設の子会社である中国路橋工程(CRBC)は、クロアチア南部の沿岸部に巨大な斜張橋(ペリェシャツ橋)を建設したが、これは5億2600万ユーロ(約730億円、うちEUが7割弱を資金支援)規模の巨大プロジェクトだ。 2025年のEU加盟が視野に入るセルビアとは、先述のハンガリーとの間の鉄道網の改修以外にも、中国は協力関係の深化を模索している。  つまり中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる。 ■有効な対抗手段を持っていないEU  加えて中国は、上記の国々に対して新型コロナウイルスのワクチン(シノバック社やシノファーム社製)を提供した実績がある。  中国製のワクチンは重症化しにくいとされるオミクロン株の流行や欧米製のワクチンに比べた場合の有効性の低さなどから需要が減退したが、友好関係の深化という意味では一定の役割を果たしたといえよう。

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