プライベートファンドのキャピタルコール、公開株・債券売りの一因にも
(ブルームバーグ): 金融環境が世界的に引き締まる中でプライベート市場のファンドは、新型コロナウイルス禍の緩和的金融政策の時代に投資家が約束した出資金の払い込みを求めている。
大手年金基金や寄付基金はこうしたキャピタルコール(払い込み要求)に応じる十分な資金があると思われるが、懸念されるのはそれ以外の多数の投資家が要求に応じるために流動資産を処分することだ。これは公開市場で株式と債券の一段の値下がりを引き起こす公算が大きい。
問題の初期の兆候は既に見られる。調査会社バージス・グループのデータによれば、プライベート市場のパートナーシップは投資家に支払うディストリビューション(分配金)を減らしている。
同社がモニターするプライベート市場ファンドの6つのカテゴリー中5つが7-9月(第3四半期)にマイナスのネットディストリビューションを記録したという。これは投資家がリターンとして受け取った額よりも大きな額の払い込みを求められたことを意味する。
バイアウトファンドのマイナス幅は76億6000万ドル(約1兆1000億円)と2020年4-6月(第2四半期)以来最大だった。
バージスのアナリスト、パトリック・ウォーレン、ルイス・オシア両氏は先月のリポートで「懸念すべき理由がある」とし、「ベンチャーキャピタルファンドのネットディストリビューションは数十年ぶりの低さとなっており、優先債でもディストレスト債でもキャピタルコールが分配金を上回る状況が起こっている」と分析した。
3つのファンドタイプで投資家への分配金が少なくとも7年で最小だったという。
キャピタルコールは、特にプライベートクレジットファンドで今年になって加速したと、500億ドル超を運用する機関投資家の上級幹部1人が匿名を条件に述べた。トリガーファンドと呼ばれるポートフォリオは、一定の条件に達すると投資家に追加の払い込みを求めるが、こうしたファンドでのキャピタルコールの動きは最大級だったという。