一眼レフの時代は終わったのか? 今になってミラーレス一眼に主力がシフトする理由
7月にニコンが一眼レフの開発から撤退するというニュース(日本経済新聞)が流れ、8月5日には各社が小型デジカメの開発を縮小するというニュース(日本経済新聞関西版)が流れ、この夏、「デジカメ市場がヤバいことになってるよー」と印象付けたい人たちがいるとしか思えない昨今、いかがお過ごしでしょうか。
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でも経済紙的にいわんとしていることはなんとなく分かる気がする。
今までデジタルカメラはキヤノンとニコンを筆頭に日本企業のほぼ独壇場だった。そのピークは2011年前後。そこからコンパクトデジカメの市場がどんどんスマートフォンに奪われ、激減していく。それに伴って写真を撮る人や撮影される枚数はどんどん増えているので写真人口自体は増えてる。良いことである。膨大な歴史の記録が画像・映像で残るのは良いことである。
ただ、スマートフォン時代になったとき、ワールドワイドではSamsungの「GALAXY」やAppleの「iPhone」など主役が海外のメーカーへ移り、コンパクトデジカメ時代に一世を風靡(ふうび)した日本のカメラメーカーはぐっと沈んでしまったのだ。ケータイの時代にはカシオ計算機の「EXILIM」が頑張ってたし(でもモバイルからもデジタルカメラからも撤退してしまった)、今でもソニーの「Xperia」は頑張っているけれども、グローバルで見ると周知の通り。
結局コンパクトデジカメの市場はぐっと小さくなり、カシオが撤退したり、それ以外のメーカーも明示的に撤退したところもあれば、事実上新製品をほぼ出してない、メーカーのWebサイトからひっそり消えつつあるというのが現状だ。
数カ月前、知人から「5万円くらいのコンパクトデジカメが欲しいのだけど何がいい?」と尋ねられて調べて驚いたのだ。キヤノンの「IXY」ですら、大手カメラ量販店ではもう扱ってないのである(キヤノンのWebサイトにはまだ掲載されているがオンラインショップでは注文できない)。
キヤノンのWebサイトを見るといくつか現行モデルとして登録されているが、半分以上は「在庫僅少」(つまり、在庫のみ)。新コンセプトモデルとして登場した望遠カメラを除くと残るは3モデル。さらに、オンラインショップへ行ってみると、「IXY650」は現行モデルながら「現在本商品はご注文を受け付けておりません」と出てくる。
1型センサーを搭載したハイエンド機は現役だが、普及型の廉価なモデルはほぼ消えつつあるのだ。
大手カメラ量販店のサイトでコンパクトデジカメの現行モデルに何があるか調べるとより分かりやすい。販売終了モデルは記載されないからだ。
IXYとか「Cyber-shot」とか「FinePix」の全盛期を知ってる身からすると寂しい限りで、かつてあった「finepix.com」というサイトもすでに無くなってる。
スマートフォンが登場した当初は「画質はコンパクトデジカメの方が上」と言われたが、ハイエンド機を除くと画質はスマートフォンの方が上回りつつある。製品サイクルが早く、最新の技術がいち早く投入される市場規模を持っているジャンルは強いのだ。
経済紙的には日本企業が世界を席巻していたのに、スマートフォンの時代になったらほとんどが海外ブランドになってしまった現状を話題にしたくなるのは分からないでもない。
しかも撮った写真のブラウズ環境の中心がスマートフォンになった今、撮る・見る・見せるが1台で完結するスマートフォンに対して、撮ることに特化したカメラが勝負するのは困難だ。
結局、コンパクトデジカメでかろうじて生き残っているジャンルは3つだけ。
1つは1型以上のセンサーを搭載したハイエンドコンパクトだが、ソニーが「VLOGCAM」として生まれ変わらせた「ZV-1」以外はここ3年ほど新製品が出てない。
APS-Cセンサーを積んだリコーの「GR III」は根強い人気だが、そういう固定ファンがしっかりついている機種以外は難しいだろう。
2つめは超望遠のカメラ。具体的にはニコンの「COOLPIX P1000」と「P950」。現在、ニコンがラインアップする唯一のコンパクトデジカメだ。35mm判換算で3000mm相当(COOLPIX P1000の場合)という突き抜けすぎた唯一無二の性能を持つだけに、なんとか生き残ってほしいなとは思ってる。
3つめは防塵防滴防水耐寒耐衝撃のタフカメラ。OMDSの「TG-6」とリコーの「WGシリーズ」の2つが現役だ。これらには水中や過酷な環境での撮影という他ではまかなえないニーズがある。
先日、わたしにコンパクトデジカメが欲しいと相談してきた人は、結局タフモデルの「TG-6」を選んだそうな。スマホとは違う性格の違う使い方ができるいい選択肢だったと思う。