中ロの軍事的連携の強化と日本の安全保障

2022年08月26日

飯田 将史

ロシアのウクライナ侵攻後のことし5月、中国軍とロシア軍の爆撃機などが日本周辺を共同で飛行し、大きな注目を浴びた。筆者は、米国と協力して対抗する戦略的利益から中ロは軍事協力を深化させており。日本はそれに対抗した抑止力強化が必要だと指摘する。

日本周辺でロシアの爆撃機と共同飛行した中国のH6爆撃機=2022年5月24日[防衛省統合幕僚監部提供](時事)

2022年2月にロシア軍が大挙してウクライナに侵攻したことは、国際法に反し国際秩序を破壊する行為であるとして国際社会から強い批判を浴びているが、中国軍はそのロシア軍との連携を強めつつある。同年5月には、中国軍とロシア軍の爆撃機が日本海、東シナ海、太平洋の上空を共同で飛行するなど、日本周辺における両国軍の連携した行動も増加しつつある。中ロはなぜ軍事的な連携を強めているのだろうか。また、それは日本の安全保障にいかなる影響をもたらすのだろうか。

深化する中ロの軍事協力

2022年5月24日の中ロの爆撃機などによる飛行 出所:統合幕僚監部の発表資料

かつて中国とソ連は陸上国境をめぐって軍事衝突を引き起こすなど、厳しい対立関係にあった。ソ連の後継国家であるロシアと中国の間にも根深い不信感が存在するともいわれていたが、中ロは2004年に陸上国境問題を話し合いで解決し、関係発展の最大の障害が取り除かれた。翌年8月には、両国間で初めてとなる共同軍事演習である「平和使命2005」が、対テロを目的として中国の山東半島で行われた。その後「平和使命」は上海協力機構(SCO)の対テロ共同演習としてほぼ毎年実施されている。 他方で、中国海軍とロシア海軍は12年4月に、初めての共同演習を「海上連合2012」として山東半島沖の黄海で実施した。双方合わせて20隻を超える艦船が参加し、共同で対空戦、対潜戦、捜索救難などの訓練を行った。その後、両海軍は訓練内容を高度化させたり、実施海域を多様化させながら「海上連合」演習を毎年実施している(20年は未実施)。実施海域は日本海(13年)、東シナ海(14年)、地中海・日本海(15年)、南シナ海(16年)、バルト海・日本海(17年)、南シナ海(18年)、黄海(19年)、日本海(21年)であり、中国周辺海域だけでなく、欧州方面でも実施されている点が注目に値する。 また近年では、大規模な軍事衝突を念頭に置いた戦略的演習に、中ロ両軍が相互に参加する動きがみられている。18年9月には、ロシアの東部軍管区を中心に行われた「ヴォストーク2018」に、中国軍が初めて参加した。中国軍は兵士約3200人、車両約1000両、航空機約30機を鉄道や航空機で輸送し、中国軍史上最も大規模な海外演習への派兵であるとされた。 中国軍は、19年9月にロシアの中央軍管区で行われた「ツェントル2019」、20年9月にロシアの南部軍管区で行われた「コーカサス2020」にそれぞれ参加した。21年8月には、中国の西部戦区で行われた戦略的演習である「西部・連合2021」に、ロシア軍が初めて参加した。このような戦略的演習への相互参加は、中ロの軍事的連携が着実に深化していることを示しているといえるだろう。 さらに中国軍とロシア軍は、日本周辺の海空域において連携した行動をとり始めている。19年7月には、中国軍のH-6爆撃機2機と、ロシア軍のTu-95爆撃機2機が、日本海から東シナ海にかけて共同で飛行した。中国国防部は、これを初めての「中ロ共同空中戦略パトロール(聯合空中戦略巡航)」であると説明した。その後、20年12月に2回目の共同飛行が行われ、21年11月には3回目の共同飛行が太平洋へと飛行区域が拡大されて行われた。そして22年5月に4回目となる共同飛行が行われたのである。 さらに両国の海軍も、日本周辺での共同行動をとり始めた。21年10月に日本海で「海上連合2021」を実施したのち、両国海軍の艦船それぞれ5隻が共同で津軽海峡を東進して太平洋へ進出し、日本の太平洋沿岸を航行したのち、大隅海峡を西進する日本を周回するような共同航行を行った。この航行について中国側は「中ロ海上共同パトロール(海上聯合巡航)」を行ったと発表した。同年11月23日に、オンラインで会談した中国の魏鳳和国防部長とロシアのショイグ国防相は、中ロの海上と空中における共同パトロールについて総括するとともに、両軍間の戦略的な協力を推進することで一致したのである。

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