中国共産党の習総書記を「領袖」と呼ぶ動き、毛沢東型の個人崇拝懸念
(ブルームバーグ): 中国共産党の習近平総書記(国家主席)は国内で多くの称号を持ち、「万能主席」とも呼ばれるが、習氏を建国の父である毛沢東氏に使われていた「領袖」と呼ぶ動きが党幹部で広がっており、文化大革命を展開した毛氏のような個人崇拝を巡る懸念が広がっている。
党当局者や国営メディアはここ数年、習氏を「人民の領袖」と呼ぶことがあったが、今週に入りこの呼称を使う党幹部が増えている。
習総書記の側近で、党序列25位以内の政治局員を務める北京市トップの蔡奇党委員会書記は16日、習氏が「われわれの心からの敬愛を受ける人民の領袖」であることがこの10年で証明されたと主張。同じく政治局員の王晨氏も、湖北省代表団との17日の討議で人民の領袖と習総書記を持ち上げた。
さらに、党中央政策研究室の田培炎副主任も17日の記者会見で、「習総書記はこの偉大な時代が生んだ傑出した人物、全人民が仰ぐ人民の領袖だ」と述べた。
習氏は既に党の「核心」など呼称を獲得しており、領袖との一連の言及は非公式の権力固めをさらに進める方向であることを示している。他方、毛氏が1976年に死去した後、集団指導体制に移行した党内で、習総書記に権力が過度に集中していると考える党員から反発を呼ぶ恐れもある。
89年の天安門事件に関連した秘密文書を集めた「天安門文書」の監修に携わったカリフォルニア大学リバーサイド校のペリー・リンク教授は、「習近平型の毛沢東主義に対する憤り」は既に存在することから、領袖の呼称復活はリスクを伴うと分析。新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策の要素については、毛氏が権力奪回を目指して社会を大混乱に陥れた文革との類似性も指摘される。
異例の習氏批判スローガン、北京以外の都市に拡大-厳しい検閲も続く
北京市では先週、「文革は要らない、改革が必要。領袖は要らない。投票が必要」と習総書記を批判するスローガンが記された横断幕が市内の陸橋に掲げられた騒動があり、こうした懸念は表面化している。