仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」
天才経営者 バンクマン-フリード
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11月11日、大手暗号資産(仮想通貨)交換業者、米FTXトレーディングが"チャプター11(連邦破産法11条、わが国の民事再生法に相当)"を申請した。 【写真】「仮想通貨」は"地獄絵図"へ...! FTX「破綻」で待ち受ける大悲劇 かつて、天才経営者と謳われた、FTX創業者であるサム・バンクマン-フリード氏の名声は凋落し、その経営手腕には多くの疑問符が付くことになった。 米国の著名経済学者であるJ.K.ガルブレイスは、バブル崩壊の前に天才が表れると指摘した。 バンクマン-フリード氏はその一人といえるかもしれない。 2020年3月中旬以降、同氏が生み出した暗号資産の一つである、"FTXトークン=FTT"は見る見るうちに上昇していった。 それと同時に、バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ。 暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると"砂上の楼閣"だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう。
FTT高騰の背景
FTX創業者のバンクマン-フリード氏は、一時、"天才経営者"、"フィンテック業界の救世主"などと称された。 同氏は、世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した。 そこには、あたかも神話のような強い成長への期待があった。 それを支えたのが、バンクマン-フリード氏が作った"FTT"の仕組みだった。 FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた。 2019年に香港でFTXは創業された。 その後、香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大した。 FTTを担保に同氏はFTXから自身が所有するアラメダ・リサーチに融資し、投資ビジネスを強化した。 政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。 さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ。 わずか1年ほどの間にバンクマン-フリード氏の評価は大きく高まり、"2021年の仮想通貨業界で最も影響ある人物"と呼ばれた。 また、29歳の時点で資産285億ドルを達成したといわれるマーク・ザッカーバーグを上回る富を同氏が手に入れると目されるなど、時代の寵児としてもてはやされた。