円相場、一時150円台を突破 円安基調止まる気配なし 10/2
20日の外国為替市場で円相場が対ドルで下落し、一時1ドル=150円台を突破した。バブル景気終盤の最安値圏だった1990年8月以来、約32年ぶりの円安・ドル高水準となる。今年初めからの下げ幅は約35円に及んだ。心理的節目とされる150円を超えても円安基調が止まる気配はなく、政府・日銀の対応が注目される。
円安の背景にあるのは、日米の金融政策の違いだ。米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、歴史的なインフレ抑制のため今年3月以降、大幅な利上げを続けている。これに対し、日銀は日本経済を下支えするため、現在の大規模な金融緩和を継続するとしており、運用に有利な高金利のドルに資金を移す流れが加速している。
ただし、度重なる大幅利上げにもかかわらず米国のインフレ圧力が収まる兆しは見えず、市場ではFRBの金融引き締めが長期化するとの見方が強まっている。為替市場では他の通貨に対してもドル買いが優勢となる「独歩高」状態が続いているが、バイデン米大統領は15日、「ドル高を懸念していない」とドル高を容認する姿勢を強調。ドルの独歩高を止めるのは難しい状況だ。
日本は対策を打ちあぐねている。政府・日銀は9月22日、急激な円安に歯止めをかけるため、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入を実施。円相場は一時、1ドル=140円台まで上昇したものの円安の流れは止まらず、1カ月ほどで約10円も再下落した格好だ。
日銀の黒田東彦総裁は国会などの答弁で「最近の円安進行は急速かつ一方的で、経済にマイナスで望ましくない」と警告。鈴木俊一財務相も「過度な変動に対しては適切な対応を取る」と再度の為替介入も辞さない姿勢を示しているが、FRBの利上げが続く限り、介入を実施しても効果は一時的なものにとどまる可能性が高い。円安は輸入コストの上昇を通じ、食料品の値上げなど市民生活を直撃しており、日本経済にとっても下押し要因となりそうだ。【佐久間一輝】