口先介入という黒田日銀総裁の「虚砲」では円安は止まらない…求められる企業の“体質改善”
円相場で揺り戻しがあった理由
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先週末(9月9日)、24年ぶりの安値圏で1ドル=145円を伺っていた円相場が反転、海外市場で一時1ドル=141円台半ばまで円高に戻す場面があった。 【写真】「美人すぎる寝屋川市議」の写真集全カットを公開する この原因は、日銀の黒田総裁の口先介入だ。岸田総理との会談後、「急激な為替変動は企業経営を不安定にし、好ましくない」と強調したのである。これにより前々日の鈴木財務大臣の口先介入をあざ笑うかのように24年ぶりの安値更新を伺っていた円相場に揺り戻しがあったのである。 しかし、円安の主因は、主要国の中央銀行の中で日銀だけがマイナス金利政策を続けており、日米間の金利格差が一段と拡大するとみられていることにある。9日の口先介入でも、黒田総裁は金融政策の変更そのものは口にしていない。 その一方で、"伝家の宝刀"とでも言うべき、日米協調の「円買い・ドル売り」を実施するためのハードルはあまりにも高い。遠からず、再び円が下げ足を速めることは避けられない見通しだ。 まずは、円相場の動きをおさらいしておこう。 一昨年12月から続く円安の流れが小休止したのは、今年7月半ばから8月1日にかけてのことだった。1ドル=140円近くまで下げた円相場が1ドル=130円近くまで円高方向に戻したのである。この背景は、米連邦準備理事会(FRB)が急速な利上げを繰り返したことに伴い、急速に景気後退懸念が台頭したことだった。FRBが利上げペースを緩めるのではないかとの期待が高まる場面があったのだ。 ところが、その後も、米国の高インフレには変化がなかった。加えて、FRBが、「例え、景気後退という副作用があってもインフレ退治を最優先する考えに変化はない」という強硬姿勢を鮮明にしたため、再び、日米の金利格差が拡大しかねないとの見方が強まった。これが、先週末にかけての急ピッチな円安の原動力である。 しかも、その動きは急で、円は米ドルのみならず、他の主要通貨に対しても下げ、ほぼ全面安の展開になった。対ドルでわずか1週間ほどの期間に1ドルに付き5円ほど下落したばかりか、9月8日に円は1豪ドル=97円49銭近辺、1ユーロ=144円33銭近辺と、いずれも2015年1月以来7年8カ月ぶりの円安水準をつけた。カナダドルに対しても、1カナダドル=110円に迫り、こちらは2008年以来の安値圏に落ち込んだのだ。 放置すれば、円の全面安は一段と深刻化しかねない勢いだった。というのは、欧州中央銀行(ECB)が9月8日の理事会で、0.75%の大幅な利上げを決めたからだ。ECBにとっては、1999年のユーロ誕生以来、1回に0.75%引き上げるのは初めてのこと。しかも、ラガルド総裁は記者会見で「インフレ率が高すぎるため、今後さらに利上げを続けるつもりだ」と述べ、FRBと同様に、かなりの引き締め継続を厭わない姿勢を鮮明にした。 米国では同じく9月8日、FRBのパウエル議長がシンクタンク「ケイトー研究所」主催のオンラインミーティングで講演、「仕事を完了するまで続ける必要がある」と語り、インフレ抑制の目標達成を目指して利上げを続ける考えを強調した。このため、今月20日と21日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で、またまた通常の3倍の幅にあたる0.75%の利上げを決めるという観測が幅広く浸透しつつあった。 こうした中で、たまりかねた形で飛び出した対抗策が、冒頭で紹介した黒田総裁の口先介入だ。効果的なサプライズを演出しようとしたのだろう。通常の記者会見ではなく、黒田総裁が岸田総理との会見後に発言するという舞台も用意された。