外資が逃げる中国の深刻な金欠 ロシアのウクライナ侵攻で対中債券投資の引き揚げ加速

2022年09月12日

拙論は本欄や産経新聞で7月以来、中国経済の長期停滞局面入りを論じてきた。米欧日の経済専門紙も今月に入って中国経済の行き詰まりに焦点を合わせつつあるが、盲点がある。金融である。中国経済は外国からの資本流入に依存しており、逆に流出が激しくなると、金融危機に陥る。今や、その寸前だ。 【グラフでみる】日本国民の平均年収推移 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版は、9月1日付で「底入れ遠い中国経済、対策なき見慣れた問題」、5日付で「中国経済の『米国超え』懐疑論が浮上」と報じた。日経新聞は「経済教室」欄で5日付から「苦境続く中国経済」を3回に分けて中国経済が専門らしき学者3人に割り振っている。 WSJの1日付は、住宅市場の混乱、ロックダウン(都市封鎖)や、「都市部の求人倍率は大幅に低下し、若年層の失業率は13%から20%近くまで上昇」など、景気の急激な悪化にもかかわらず、当局が目立った政策をとらず放置していることについて「見覚えある光景だ」と断じている。なぜ習近平政権が無策なのかは論じていない。 5日付は、最近までエコノミストの間では、中国は国内総生産(GDP)規模で2020年代末までに米国を追い抜くとする見方が支配的だったが、今や多くの専門家がそうならないと主張し始めている。「高齢化など人口動態の問題や高水準の債務が足かせになりかねない」からだという。しかし、高水準の債務が成長を支える事実を素通りした。 日経の経済教室は「人口動態、不動産不況に影響」(5日付)とあるが、不動産不況が「中国経済の苦境」にどう結びつくか説明不足の感ありだ。続く「『投資主導で安定成長』道険し」(6日付)は、中国は投資したくてもできなくなっていることには触れていない。 これらについて、拙論が答えを出すというのもおこがましいが、全て中国特有の通貨・金融制度に起因する。中国は流入する外貨すなわちドルに応じて人民元資金を発行し、土地配分権を持つ党官僚がその資金と結びつけて不動産、インフラなど固定資産投資を行い、GDPをかさ上げしてきた。外貨の流入源は経常収支黒字、それと外国からの対中投資で、言い換えると中国の対外債務である。他方で、習政権は対外膨張策をとるので対外投資が増える。 さらにもう一つ大きな資本流出がある。規制の網をかいくぐる資本逃避で、膨らむと国内資金の裏付けになる外貨はマイナスになる。いま最大の資本流出要因は外国からの対中債券投資の引き揚げだ。ロシアのウクライナ侵略戦争開始後、激しくなっている。 グラフはこの外国人保有の中国債券と外貨準備について今年1月に比べた急減ぶりと、人民元相場の下落を組み合わせている。7月の債券保有高と外準の減少額はともに1170億ドル(約16兆6000億円)台で一致する。外資が逃げる分だけ中国経済はたちまち金欠に陥るのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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