実質実効為替レートで読み解く本当の「円の実力」 1/3

2023年01月31日

伊藤 元重

2022年、日本経済は「異次元」とも呼ばれる円安水準に襲われた。一時、ドル円レート(相場)は1ドル=150円を超えたが、その後反転し、23年に入ると120円台まで戻る動きを見せている。さまざまな議論が展開される中、本当は何が起きているのか。「実質実効為替レート」をもとに、背景にある構造要因を分析する。

為替レートの動きを予想するのは「不可能」

1ドル=150円台まで下落した円相場を示すモニター(2022年10月21日午後、東京都港区の外為どっとコム)時事

私たちは通常、ドル円レートの数字を見て、為替相場について議論する。そのドル円レートが昨年、激しい動きを示した。 それまで2013年から21年まで10年近く、多少の変動はあったものの、1ドル=110円前後で推移していた。人々は何となく、為替相場は安定していると考えていた。 ところが――21年に米国におけるインフレの動きが顕在化すると、事態は大きく変化する。ドル金利が上昇を始め、日米間の金利差が広がりだしたのだ。それを受けて、ドル円レートは一気に円安方向に動いた。22年の1月に113円前後だったのが、10月には150円を突破した。 この間、ドル円の金利差が市場の注目点であった。米国ではインフレがなかなか止まる気配を見せず、金利は急上昇していった。一方で日本銀行は動こうとせず、0・25%という長期金利(10年物国債利回り)の上限コントロールを固持しようとしていた。こうした流れの中で、21年の年初に1%程度だったドル円の金利差は、円安のピークとなった22年10月には4%近くまで広がった。 11月に入ってドル円レートは一転、円高に向かって大きく舵を切る。この原稿を書いている23年の年始時点では、120円台まで戻る動きを見せている。 この2カ月間のドル円レートの動きは、二つの要因と深く関わっている。一つは米国における金利の下落傾向だ。米国のインフレの頭打ちを想定して、ドルの長期金利が下落を始めている。もう一つの要因は、円金利の上昇傾向である。12月に日本銀行が長期金利の上限を0・25%から0・5%に引き上げる変更を発表すると、市場は日本の金利が上昇し始めるとの想定を強める。ドル円の金利差が縮小するという想定で円高方向に大きく動き始めた。 この先、ドル円レートはどちらの方向に動くのだろうか。ちなみに「為替レートの動きを予想することは不可能である」というのが、効率的市場仮説(注:市場価格は利用可能なすべての情報を完全に反映している、という仮説)に基づく為替レートの考え方である。 この考え方に基づけば、ドル円レートの行方は分からない。ただ、どちらの方向に動いても、それなりに大きな動きとなる可能性はある。これが市場の相場観だろう。

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