日本のため?…安倍元首相が「米国との関係強化」に腐心したワケ
本連載は、武者リサーチが2022年8月3日に公開したレポートを転載したものです。
歴史と株価...いま再び大きく変化する「日米関係」
1/2
[図表1]近代日本の興亡と地政学レジーム
日本の歴史を規定してきた地政学(=世界のスーパーパワーとの関係性) 長い目で経済と市場を考えるとき1番大事なことは「地政学、換言すれば世界を統治するスーパーパワーとの関係性である」というのが当社の一貫した主張である。この地政学環境が第二次安倍政権の登場とともに劇的に変わった。 [図表1、2]は日本の地政学レジームと株価推移であるが、近代、明治・大正の繁栄を支えたのは日英同盟であった。 しかしアメリカ、イギリスを敵とした戦争に負けてすべてを失った(1945年)日本が再び大きく飛躍したのは1950年の朝鮮戦争と冷戦の勃発以降である。 サンフランシスコ講和条約(1951年)以降日米同盟のもと、1950年から1989年にかけての40年間に日経平均株価は400倍(年率16%)と大きく上昇した。この大繁栄の背後にあったのは、アメリカのアジアにおける自由主義の砦としての日本に対する継続的な経済的サポートであった。 しかし1990年を前後して冷戦が終わり、日本のアジアにおける自由主義の砦という役割は失われた。 1990年から2010年頃までの20数年間は、経済産業の面で著しく力をつけた日本をアメリカは脅威とみて、日本叩きを推し進めた。このアメリカの日本叩きそしてその手段として実現した超円高の結果、日本は失われた30年という長期停滞に入ったといえる。 この平成の30年間、日本の株価は2割強のマイナス、アメリカその他の国では約10倍に株価が上昇するなかで日本のひとり負けが顕著になった。 この失われた30年の背後にあったのは日本とアメリカの関係性の変質である。つまり日本を守る日米安保体制から異常に強くなった日本を抑えるための安保体制、いってみれば安保瓶の蓋の時代といってよい。 しかし日米関係はいま再び大きく変わっている。米中対立が決定的となり、中国を抑止するための同盟、日米同盟の第3段階に入っている。中国がアメリカにとっての最大の脅威であり、中国抑え込みのためには、日本が最も重要な盾となる。 日本は世界最強のアメリカの最も大切な同盟国となったのである。それによる大きな追い風が、今後の日本経済を大きく押し上げていくと思われる。