日本は「巻き込まれる」のではなく当事者 米シンクタンクの台湾侵攻シナリオ第2弾 求められる政治の覚悟

2023年01月30日

【ニュース裏表 峯村健司】 米有力シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が実施した、中国軍による台湾侵攻シミュレーションを紹介した前回の拙稿は多くの反響をいただいた。今回も引き続き解説していきたい。 【写真】台湾周辺の上空で演習を行う中国人民解放軍の軍用機 前回、中国軍が台湾に軍事侵攻に踏み切った際、「虎の子」である空母2隻を失うことをためらった米軍が軍事介入しない可能性が高いことを指摘した。実は、米国よりも厳しい判断を迫られるのが、日本だ。 西太平洋一帯において、米軍が空母などの艦艇や戦闘機を出撃させる拠点となるのが、米領グアムと在日米軍基地だ。極東最大の米空軍基地がある沖縄県・嘉手納をはじめ、長崎県・佐世保、神奈川県・横須賀、東京都・横田の各基地が主な拠点となる。これらの基地を米軍が使えなければ、米本土から遠い台湾周辺での作戦の展開は難しくなる。 CSISの報告書も、「日本の米軍基地を使えなければ米国の戦闘機などは効果的に戦闘に参加できない」と警鐘を鳴らしている。 在日米軍基地の重要性は、中国側も十分理解しており対策を進めている。中国軍が2004年にミサイル部隊、第二砲兵向けに作成した内部文書には次のような記載がある。 「わが軍が台湾に進攻した際、敵国はわが国周辺の同盟国の基地や空母艦隊を使って介入してくるだろう。同盟国にある敵国基地を威嚇攻撃するのに通常型ミサイルは有用だ」 ここでいう「敵国」とは米国、そして「同盟国」とは日本を指していることは明らかだ。台湾有事が緊迫化してきたら、中国軍は在日米軍基地を標的にミサイルを発射すると警告したり攻撃したりすることを念頭に置いていることが分かる。 CSISのシミュレーションでも、ほとんどのシナリオで日本の米軍基地が破壊され、数万人の兵士を失う結果が出ている。シミュレーションでは、「日本が米軍による国内基地の使用を容認する」ことが前提条件となっている。 だが、実際の有事で米軍が日本にある基地を使う際には、日米安全保障条約によって「日本政府と事前に協議する」ことが義務づけられている。 つまり、台湾有事の行方のカギを握るのは、日本政府の判断なのだ。 中国側は日本側にさまざまな揺さぶりをかけてくるだろう。中国国内の日本企業や従業員らに圧力をかけてくる可能性もある。こうした状況下で、日本の首相が米側に対して、「どうぞ基地をご自由に使ってください」と即答できるだろうか。 一方、もし米軍に日本の基地を使わせなかったら、台湾はあっさりと中国に併合され、日米同盟も破綻しかねない。 日本政府は、こうした「究極の選択」を迫られる状況に対処する準備ができているのだろうか。日本でも有事に備えた本格的なシミュレーションに着手すべきだろう。政府機能や空港、港などの重要インフラがミサイルなどの攻撃に破壊されにくくしたり、復旧しやすくしたりする工事のほか、地下化を進めるなど、やるべきことは山積している。 今回のCSISのシミュレーション結果を受け、「台湾をめぐる米中戦争に巻き込まれるな」と主張する一部の専門家やメディアの論調がある。だが、「台湾有事」は米中や中台の間だけで起きるわけではないことが改めて裏付けられた。 日本こそが最前線の当事者なのだ。 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究員、青山学院大学客員教授・峯村健司)

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