日銀による緩和修正の意味とは
日銀は20日の金融政策決定会合で緩和政策の一部を修正した。金融市場調節方針の基本的なところは変えずに、長期金利操作の運用のところで、国債買入額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を従来の±0.25%程度から±0.50%程度に拡大することとした。
その理由として声明文には次のような指摘がなされていた。
「日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、長短金利操作の運用を一部見直すことを決定した」
つまり市場機能の改善を目的としている。
「本年春先以降、海外の金融資本市場のボラティリティが高まっており、わが国の市場もその影響を強く受けている。債券市場では、各年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定などの面で、市場機能が低下している。国債金利は、社債や貸出等の金利の基準となるものであり、こうした状態が続けば、企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす惧れがある」
何をいまさら感があるが、日銀が自ら債券市場の機能を低下させている。指し値オペによって長期国債の利回りを0.25%でおさえつけ、先物のチーペストも同様に抑え込むことで、市場で適切な利回り形成がなされずにいる。国債利回りが適切に形成されないことで、社債や貸出等の金利にも影響を及ぼしており、それが懸念されての今回の調整らしい。
「日本銀行としては、今回の措置により、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、企業金融などを通じて、より円滑に波及していくと考えており、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることで、「物価安定の目標」の実現を目指していく考えである」
10年債利回りを、とりあえず市場実勢に近づけて、これで適切なイールドカーブの形成がなされ、金融緩和の持続性を高めることができると日銀は考えているようである。黒田総裁はこの決定について、長期金利の許容変動幅拡大は「利上げではない」と説明した。
日銀は今回の決定に際して、国債買入れ額を大幅に増額することも決定した。長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定」で、従来の月間7.3兆円から9兆円程度に増額する。
さらに、その適切なイールドカーブを促すためか、日銀は20日当日の決定会合後に、2年国債と5年国債、そして20年国債の指し値オペをオファーした。それぞれ0.020%、0.170%、1.245%で買入金額に制限を設けずオファー。そして10年は0.5%となる。
日銀は自ら、適切とみられるイールドカーブを形成しようとしているようである。これはむしろイールドカーブコントロールの強化とも取れるのだが。
記事に関する報告久保田博幸