日銀のイールドカーブコントロール撤退予想が25%という数字の意味

2022年11月30日

日本銀行の黒田東彦総裁は11月2日、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の運営について、将来的に2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になれば「その前段階でイールドカーブコントロールを柔軟化していくことは一つのオプションとしてあり得る」と語った。衆院財務金融委員会で答弁した(ブルームバーグ)。

 日銀のイールドカーブコントロールでは現在、政策金利の目標として短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度(ゼロ%を中心に上下0.25%程度)に設定している。

 黒田総裁の認識による「2%の物価安定目標の実現」とは、日銀が本来物価目標としている消費者物価指数(除く生鮮)の前年同月比プラス2%ではないようである(これもおかしいことではある)。賃金上昇を伴い、安定的に2%以上ということのようで、ハードルは非常に高くなっている。

 黒田総裁から「イールドカーブコントロールを柔軟化」という言葉そのものが出たことはサプライズだが、これまでの黒田総裁の頑なな姿勢に変化がみられたわけではない。

 ただし、「イールドカーブコントロールを柔軟化」と言う言葉が引き出される状況になっていることもたしかである。

 私自身は引き出される状況うんぬん言う前に、市場が決めるとしていた日銀が、自らの会議室で、長期金利を決めるなど戦時下でもあるまいし、言語道断だと思っている。すぐに撤廃すべしというのが私の意見である。しかし、そんな見方をする債券市場関係者は何故か極めて少数派であった。

 29日付の日本経済新聞の市況欄に、日銀の長期金利目標、「来年度末までに撤廃」25%、という記事があった。

 なんだまだ25%か、ということではない。これはどうやら25%もなのか、ということなのである。

 この記事のもとになっているQUICK社のアンケートでは、以前にはイールドカーブコントロールの今後についての予想の選択肢に、「レンジの引き上げ」、「期間の短期化」(たとえば10年国債から5年国債に)などはあっても、「撤廃」の選択肢そのものがなかったのである。

 その「撤廃」という選択肢が出てきたとともに、それが25%となっていたことで今回の記事になったとみられる。ちなみにレンジの引き上げ予想は42%、短期化予想は27%となっていた。

 債券市場の弊害となっているイールドカーブコントロールは、期間やレンジの微修正などでは解決にならない。さらに中途半端な修正をしても市場に追い込まれ、撤廃をせざるを得なくなる。したがって修正ではなく撤廃が望ましい。

 なにはともあれ、撤廃の賛同者が25%なりに増加してきたことは、良い兆候とも言えるのかもしれない。しかし、それでも来年度末予想で25%なのかともいえる。今年度末の間違いではないのだろうか。

記事に関する報告久保田博幸金融アナリスト

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