日銀の長期金利の上限引き上げは政策の転換か 単なる為替対策か 1月18日発表「経済・物価情勢の展望」レポートにその答えが
【うまちゃんの財ザク!】
年末に日銀が長期金利の変動幅の上限を0・25%から0・5%に引き上げたことについて、日銀の黒田東彦(くろだ・はるひこ)総裁は「今回の修正は利上げや金融の引き締めではない」という認識を示しましたが、市場では「事実上の利上げ」と受け止め、円高が加速しました。
【写真】大学時代はミス同志社、「うまちゃん」こと経済アナリストの馬渕磨理子
日銀は表向き、市場機能の改善や金利の歪みの是正を理由にしています。それが狙いだったとしたら、次なる「金融引き締め」もあり得ます。
一方、日銀の本音が円安に歯止めをかけてインフレを止めることが狙いだとしたら、しばらくは金融引き締め的な政策は出てこないと思います。今回の上限引き上げも単発で終わる可能性があります。
為替が狙いなら、「なぜ1ドル=150円台のときにしないのだろう?」との疑問もあります。これは円安が加速する中で政策転換しても効果は限定的なので、米国の利上げのゴールが見えつつあって円安も落ち着き、かつ年末で市場への参加者が少ないタイミングを見計らったのでしょう。
日銀にとって、1ドル=140円以上の円安も、100円以下の円高も好ましくありません。為替対策だったとしたら、円が120~130円台で推移している限り、これ以上の引き締めはないということです。賃金上昇が伴うインフレが生じた場合は別ですが、それが起きてない中で、短期金利の引き上げ、実質の利上げ政策をすることはあり得ません。
120~130円台の水準であれば、引き続きインバウンド関連や円安メリットの製造業は注目です。
黒田さんは今回、「金融緩和は現状維持」、あるいは「金融は引き締める」のどちらでも整合性のとれるような状態にしました。政策の転換なのか、単なる為替対策だったのか。
1月18日、日銀の金融政策決定会合直後に「経済・物価情勢の展望」レポートが発表されますが、その中で「物価の見通し」に変更がなければ追加の引き締め政策はないでしょう。しかし、「少し物価が上がるかもしれない」という内容になっていた場合は、さらなる引き締め政策が出てくる可能性があります。
2023年の日銀の金融政策決定会合、これまで以上に注目度が高くなります。
ということで、今年もよろしくお願いいたします。
<おまけのひと言>
「帝国データバンクによると、今年が創業・設立から節目の『周年企業』が14万余社あるそうです。化学素材メーカーの戸田工業が創業200周年、大成建設や王子ホールディングスが150周年。めでたくも誇らしいことです。これにあやかる動きもありますよ」
【財ザク!】「貯蓄から投資へ」と提言する政府。その投資で少しでも財産アップを達成するために「うまちゃん」が有益な情報をザクザクとお届けします。
■馬渕磨理子(まぶち・まりこ) 経済アナリスト。日本金融経済研究所代表理事。愛称・うまちゃん。1984年4月27日生まれ。38歳。滋賀県出身。同志社大学法学部卒、京都大学公共政策大学院修士課程修了。大学時代はミス同志社。『LiveNewsα』(フジテレビ系)など出演番組多数。ユーチューブ『馬渕磨理子の株式チャンネル』も人気。新刊『収入10倍アップ 高速勉強法』(PHP)がいきなりベストセラー。