昨年「7割近い大暴落」の仮想通貨を待つ未来…兎年は「飛躍」か?「ラビットホール」か?
昨年の仮想通貨(暗号資産)市場は、ビットコインが年初から7割近く暴落するなど散々だった。ところが、米国の投資家は若い世代を中心に、まだまだ絶望の境地には至っていないようだ。兎年の今年、仮想通貨を待つ未来は「飛躍」か? それとも「ラビットホール」か? 『マネーの代理人たち』の著者で、経済ジャーナリストの小出・フィッシャー・美奈氏が分析する。 ---------- 【写真】仮想通貨で「大儲けした人」「大損した人」が洗いざらい話した
ミレニアル世代が仮想通貨に入れ込む理由
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新年などの節目が大事なのは、精神面での「リセット」機能にあると思う。 前の年が不調続きでも、新しい年という区切りで気持ちを切り替えることで、再出発へのエネルギーが湧いてくるのだ。 昨年、仮想通貨の大暴落で痛い思いをした個人投資家にも、心機一転、再チャレンジを考えている人が結構いるようだ。 昨年の仮想通貨市場は、ビットコインが年初の5万ドル近辺から1万6000ドル台まで7割近くも大暴落するなど、メルトダウン状態になった。 「フリーフォール」とは下値のメドがつかない金融資産の下落のことを指すが、遊園地の絶叫マシーンにも使われる。東北出身の方だろうか、日本の個人投資家にこの大暴落を「秋田ふるさと村」の「なまはげフリーフォール」に例えていた人がいた。角度がほぼ垂直の落下型滑り台のことだ。 突然底が抜け、真っ直ぐに落下する時の、内臓が浮かぶような恐怖感は共通している。 日本でも仮想通貨で資産を「数億円」減らしたと告白する資産家ユーチューバーがいるが、米国では日本以上に若者が仮想通貨に入れ込んでいる。CNBCが750人を対象に行った最近のアンケート調査では、ミレニアル世代の3割が、なんと全資産の半分を仮想通貨に注ぎ込んでいた。 彼らの合言葉は「YOLO=人生は一度きり(You Only Live Once)」(※関連記事:個人投資家、ヘッジファンドに勝利!? 「ロビンフッド」は過熱する株式市場の「誰の味方」か)。一度きりの人生だから大きい夢を見よう、仮想通貨投資は「オール・イン(手持ちの全てを一つの対象に投資すること)」で、大きなリスクを取るのが熱い生き方だ、という姿勢だ。 当然のことながら、昨年のクリプト市場はつるべ落としの続落の後で11月にはFTXの破綻というダメ押しまで入り、YOLO投資は叩きのめされることになった。 ソーシャルメディアには、大金を失った個人の損失チャート付き自虐コメントや、大負けトレードをサッカーシュートを顔面に受けて倒れるゴールキーパーに例える動画など、痛いジョークが溢れた。 多くのミレニアル世代やZ世代にとっては、クリプト市場崩壊は単なる資産損失以上の意味を持つ。 金融市場が実体経済より大きくなってしまった今の時代は労働が報われない。著名なトマ・ピケティの『21世紀の資本』を借用すれば、実体経済の成長率は年率2%以下だから給料は横ばいだが、土地や株などの金融資産は平均5~6%くらいのリターンを生むので、真面目に働くより投資で稼いだ方が早く資産が増えるというのが実情だ。 資産を持つ富裕層と勤労者の格差はますます拡大していく。 このように社会契約が破綻している時代、若者たちにとって仮想通貨投資とは、ドルや円など政府発行通貨に象徴される既存のシステムに反抗し、勤労に頼らずに経済的自由を得るという新しい生き方への期待を与えてくれるものなのだろう。 そのせいか、クリプト投資には株や債券以上に感情的な「応援型」投資をする人が多い。もちろん値上がりしている間はそれに便乗するだけ、という冷めたトレーダーもいるだろうが、仮想通貨の未来を信じたいとか、そのコンセプトを支援したいという声はよく聞かれる。 だがこうした「チアリーダー投資」は冷静な判断を曇らせるし、失敗した時のメンタルのダメージも大きい。