楽観的すぎる日米の株価は調整に向かいそうだ
当該コラムは、今後の市場が「2つの要因」で極度に混乱する可能性を指摘したものだった。つまり、1つはアメリカ株が同国のマクロ景気や企業収益の悪化にもかかわらず買われすぎだと判断していること、もう1つは日本銀行の金融政策決定会合(1月17~18日)が投機的な売買のネタにされそうだ、ということだった。
まず後者の「日銀騒ぎ」から振り返れば、日本の株価や円相場は上下にかなりブレた。前掲のコラムでは「上にも下にも『余計な』混乱が増幅されそうだ」と述べていたので、ブレは「ある程度見込んでいたとおり」ともいえる。 ただタイトルのように、どちらかといえば投機筋の仕掛け的な売りにより、日本株安やドル安円高の色合いがもっと濃くなると考えていた。実際には、懸念していたほどは株安や円高は進まなかった。 ■アメリカでの「過度の楽観」は続いている
もう1つの「アメリカの景気や企業収益が悪化方向に進んでいることに対して、同国の株価が楽観にすぎる」という点については、そうした過度の楽観が想定外に長く続いていると判断する。 企業収益について、前回のコラムでは「2022年10~12月期決算における1株利益は前年同期比4.4%減益(S&P500種指数採用企業が対象。ファクトセット社集計のアナリスト予想の平均値)」であり、これは「2022年9月末時点では3.5%増益の見通しだったので、大幅な下方修正だ」と書いた。
実際に、これまで発表された10~12月期の決算や先行きの見通しが、市場で失望を招いたケースは数多い。1つ1つの詳細な数値を挙げることは避けるが、企業名だけで例を挙げると、スリーエム、マイクロソフト、ボーイング、インテル、シェブロンなど、数多い。もちろん、ネットフリックスやアメリカン・エクスプレス、ビザなど、好決算が株高につながったものもあるが、総じては業績不振が目立つ形だ。 ただ、失望を招くような業績であっても、現時点では株価の下落は一時的に終わり、すぐに株価の切り返しに向かった銘柄が多い。加えて、ある銘柄の株価下落が同業種の他銘柄へと、横に広がるような気配は今のところほとんどない。