欧州「あり得ない暖冬」が世界経済の勢力図を塗り替える? 2023年「台風の目」はユーロ圏に

2023年01月26日

米金融情報大手S&Pグローバルが1月24日に発表した1月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)は50.2と市場予想を上回り、景気拡大・縮小の分かれ目となる50を超えた。前月比ではプラス0.9ポイントの大幅上昇となった。 【全画像をみる】欧州「あり得ない暖冬」が世界経済の勢力図を塗り替える? 2023年「台風の目」はユーロ圏に 業種別に見ると、サービス業PMIが市場予想を上回る50.7と、前月から改善した。注目の製造業PMIも市場予想を上回って48.8と、分かれ目の50こそ超えなかったものの前月比ではプラス1.0ポイントの大幅改善を記録した。 下の【図表1】を見ると分かるように、ここ数カ月の製造業PMIの動きから、ユーロ圏には他の国・地域より勢いがあると感じられる。 2022年1~10月の景況悪化ペースはユーロ圏が抜きん出ていたが、それは(ロシア・ウクライナ戦争に伴う)エネルギー危機で欧州は史上最悪の冬を迎えると予想されていた当時の企業心理が強く反映されていたからだろう。 しかし、フタを開けてみればこの冬は欧州各地で観測史上最高気温を記録、地球温暖化の懸念が上回るほどの暖冬ぶり。 必然的にエネルギー需給のひっ迫は回避され、経済成長を犠牲にした必死の節電努力も相まって、天然ガス価格は年初来18%下落。1メガワット当たり58ドル強(1月24日時点)で取引されている。2022年6月に急騰が始まる前を下回る水準だ【図表2】。 半年ほど前、筆者は本連載で欧州の天然ガス価格動向について次のように指摘した(2022年9月21日付)。 「天然ガス価格は(2022年)9月に入ってから顕著に下がっている。ドイツを筆頭に各国が消費量を絞っているからで、言い換えれば『成長を放棄』するという高価な代償を支払って天然ガス価格の低減を実現している状態とも言える」 当時、ドイツは計画停電などの影響で成長率の低迷に直面すると言われ、そのダメージはロックダウン(都市封鎖)並みが想定されていた。 その深刻さを思えば、今冬のユーロ圏経済は文字通り「神風」に救われたと言っても過言ではないだろう。 1月17日に発表された同月の欧州経済研究センター(ZEW)景況感指数(ドイツの景気見通しを指数化した経済指標)は、前月比プラス40.3ポイントの大幅上昇を記録し、11カ月ぶりに景気拡大・縮小の分かれ目となるゼロを超えた【図表3】。 ZEW景況感指数はアナリストや市場関係者を対象とするアンケート調査結果から算出され、6カ月先の景況感を示唆すると言われる。 だとすれば、この1月の数字はドイツ経済の深刻な景気後退が避けられつつあることを示しているのかもしれない。 なお、天然ガス価格が急落している背景には、すでに述べたような気候要因以外に、中国の天然ガス在庫が十分なために同国のガス輸入業者の購入した分が欧州に振り向けられる(振り向けざるを得ない)状況もある。 ブルームバーグ報道(1月16日)によれば、中国のガス輸入業者は国内向けの販売価格が低迷していることもあり、2月および3月の出荷分を欧州に回す算段をしているという。 中国のゼロコロナ政策終了により世界のエネルギー需給がひっ迫するとの懸念もあったが、それも今のところ杞憂に終わりそうだ。 ただし、天然ガス価格が下がったとは言え、歴史的に見ればまだまだ高い。足元の58~59ドルという水準は、パンデミック直前の5年平均(2015~19年)約17ドルの3倍以上。価格が正常化したとまでは言えない。

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