欧州中央銀行(ECB)による大幅な利上げ観測
欧州連合(EU)統計局が31日発表した8月のユーロ圏の消費者物価指数は前年同月比9.1%上昇した。統計で遡れる1997年以降の最高を4か月連続で更新した。欧州はロシアからの供給不安で天然ガスが最高値を更新している。今秋にかけて跳ね上がるとみられる光熱費を中心にインフレがさらに加速する可能性がある(31日付日本経済新聞)。
品目別ではエネルギーが最も高く38.3%となった。国別の上昇率はドイツが8.8%となっていたが、ロシアによるウクライナ侵攻にともなう天然ガスの供給の減少で天然ガスの価格が上昇しており、それによる影響が大きい。
欧州の天然ガス価格は8月26日に過去最高値を更新した。天然ガスの価格高騰に収束の兆しが見えなくなってきている。ロシアによるウクライナ侵攻と、それによる西側諸国による経済制裁により、ロシアから欧州の天然ガスの供給量が減少している。
冬の暖房シーズンが始まる前にエネルギー価格が高騰し、ドイツでエネルギー負担軽減措置の一部が近く終了することによる影響も危惧されている。
8月のユーロ圏の消費者物価指数はエネルギーや食品を除いたベースでも前年比4.3%と、欧州中央銀行(ECB)がめざす2%の物価目標を大きく上回る状況が続く。
このため、9月8日のECB理事会では0.75%の利上げの可能性も出てきた。ECBは7月の理事会で政策金利の0.5ポイント引き上げを決定。利上げは11年ぶりだった。
ECBのシュナーベル専務理事は、7月の利上げ以降ユーロ圏のインフレ見通しは改善していないと述べ、9月の大幅な利上げを支持する考えを示唆した。
クノット・オランダ中銀総裁は、インフレがなお高まる可能性があるため、ECBは金利を速やかに正常化する必要があると指摘。
ミュラー・エストニア中銀総裁も、異例の高インフレを踏まえ、ECBは9月の理事会で0.75%の利上げを選択肢に含めるべきだと表明。
ウンシュ・ベルギー中銀総裁は、ECBが政策金利を経済活動を制限し始める水準、あるいは「中立」とされる水準以上に引き上げる必要があるかも知れないと指摘した。
これらに対しECBのチーフエコノミスト、レーン理事は待ったを掛けた。レーン理事は記録的な高インフレに対処するために通常より大きな利上げを行うことに慎重姿勢を示していた。