欧米の国債利回りの上昇トレンドは継続か。特に注意すべきは英国債の動き

2022年10月07日

サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は5日、現時点で市場は適切に機能しており、連邦準備理事会(FRB)はインフレ抑制に向け「断固として」利上げを継続するという認識を示した(5日付ロイター)。

 デイリー総裁は4日にも、FRBは一段の利上げを実施し、インフレ率を目標の2%に戻す取り組みが完全に終わるまで、制約的な金融政策を維持する必要があると述べていた。

 4日にオーストラリア準備銀行(中央銀行)が政策金利のオフィシャルキャッシュレートの0.25%引き上げを決めた。予想の0.5%より小幅な利上げとなったことで、市場では今後、欧米の中央銀行も利上げペースにブレーキが掛かるのではとの期待も出たが、その期待に対してデイリー総裁は釘を刺した格好となった。

 米10年債利回りは5日に3.76%と前日の3.63%から大きく上昇したが、その要因としてデイリー総裁の発言もあった。しかし、欧州の国債利回りが大きく上昇していたことも要因であった。

 5日の欧州の長期金利はイタリアを中心に大きく上昇していた。ドイツの10年債利回りは2.02%と前日の1.86%から上昇、フランスは2.63%と前日の2.46%から上昇。そして、イタリアは4.45%と前日の4.16%から急上昇していた。

 これは欧州中央銀行(ECB)が保有するイタリア国債が過去2か月の間に減少していたことが明らかとなったことが要因であった。つまりこれは、ユーロ圏の利回り格差抑制に向けて導入した措置が発動していなかったことを示すものとなった。

 また、ECBが6日公表した9月の理事会の議事要旨で、経済成長鈍化という代償を払っても積極的な金融引き締めが必要との考えを示していたことが明らかに。6日の欧州の国債は続落となった。

 英国の長期金利も4.02%と前日の3.86%から上昇し、6日には4.15%に上昇した。こちらは米10年債利回りの上昇の影響もあったとみられるが、トラス英首相の政策も影響した。

 英国のトラス首相は5日、与党保守党の党大会で演説し、自らの経済政策を「最後までやり抜く」と表明した。 トラス首相は「変化に混乱はつきものだ」と主張。「英国を動かし、嵐を切り抜けて英国の基盤をいっそう強固にすると決心している」と述べた。

 最高税率の引き下げは撤回しても、大規模減税を柱とする「成長プラン」そのものに変更はなく、国債の増発への懸念があらためて強まった可能性がある。ただし、その政策が議会を通過出来るのという保証はない。

 格付け会社フィッチ・レーティングスは5日、英国の長期外貨建て発行体デフォルト格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更したと発表した。格付け自体は「AA-」に据え置いた(6日付ブルームバーグ)。

 フィッチは見通しを引き下げたことに対して、トラス政権が成長プランの一環として公表した財源措置を伴わない大型経済対策が、中期的に財政赤字の著しい増大につながる恐れを理由に挙げた。

 トラス首相は自らの政治基盤そのものがやや怪しくなってきていることもたしかで、これはこれで英国債の売り要因ともなりかねない。

 ちなみに、米長期金利のチャートをみると、3.6%大きく下回るといったん上昇トレンドが終了するような格好となる可能性もあった。それがかろうじて踏みとどまったことで、上昇トレンドは継続との見方もできる。

久保田博幸金融アナリスト

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