民主党善戦と報じられる米中間選挙、現実は下院掌握の共和党が「勝利」
(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授) 今回の米国の中間選挙は日本でも異例なほど高い関心を集めた。その選挙の結果はどうだったのか。 最大のポイントは、共和党の下院での多数派制覇である。その結果、民主党のバイデン政権はこれまでの議会上下両院での円滑な支持を失った。しかもバイデン大統領は、次男のハンター氏にかかる不正疑惑に関して、共和党主導の下院で正面から追及を受けることともなりそうだ。 これまで私が米国で取材し、報道してきた十数回の中間選挙で、今回ほど日本側の関心が高くなったことはない。 その背景には、日本が国家安全保障上、米国に頼らねばならない状況がますます強くなっているという現実がある。中国の尖閣諸島への軍事攻勢、北朝鮮による頻繁なミサイル発射、日本への恫喝など、今の日本はまさに国難である。その苦境においては日米同盟での米国の軍事力の抑止が大きな支えとなる。その米国が有事にも公約どおり日本を防衛するかどうか。米国内の政治動向の変遷によるところが大である。だからこそ米国の今回の中間選挙に向ける日本側の視線も、異例なほど熱くなったのだろう。 ■ ナンシー・ペロシ下院議長を解任 「今夜、ついに公式となった。私はいま民主党の一党支配の時代が終わったことを誇りをもって宣言する」
米国連邦議会下院の共和党院内総務ケビン・マッカ―シー議員が高らかに述べた。中間選挙の投開票日から10日後、11月17日のワシントンでの記者会見だった(得票数の集計に時間がかかったのは膨大な数の郵便投票のためである)。最も注視された下院選挙の開票で、野党の共和党がそれまでの多数派の与党の民主党を破り、過半数の218議席を獲得したことが決まった直後だった。下院のこれまでの議席構成は民主党222、共和党213だった。与党の民主党が多数を占め下院全体の運営を主導してきたが、民主党はその多数派の座を失った。 「私たちは下院議長のナンシー・ペロシ氏を解任した」 マッカーシー議員は、下院の次期議長就任を確実視される共和党代表として、民主党側の指導者ペロシ議長への勝利を宣言した。 マッカーシー議員は政治的には堅固な保守派で、ドナルド・トランプ氏を2016年の同氏の大統領選初出馬から熱心に支持してきた。2020年の大統領選挙後もトランプ氏の「不正選挙である」との主張に同調し、FBI(連邦捜査局)によるトランプ氏の別邸への家宅捜索にも「不当捜査」として反対してきた。 そんなトランプ支持の議員が、下院での共和党の勝利を宣言し、反トランプを叫んできたペロシ下院議長を敗者と断じたのだ。この現実は日本の主要メディアが描く「民主党の善戦」「トランプ氏の敗北」という構図とは異なっていた。 ■ バイデン政権の国政運営は大きく後退 ここで強調しておかねばならないのは、アメリカの連邦議会では上院でも下院でも過半数を1議席でも越えて多数派の地位を得た政党の側が議事運営のほぼ全権を手中に握ることである。