為替介入したのに「1ドル=147円」…円安が止まらないのは巨額の「貿易赤字」のせいだった

2022年10月16日

24年ぶりの円安水準

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 政府と日銀が24年ぶりに「円買い・ドル売り」の為替介入に踏み切ってから、3週間を過ぎた。一時は140円台まで持ち直したものの、すでに為替は円安方向に戻ってしまっている。13日には「1ドル=147円台」という32年ぶりの円安水準を記録した。 1ドル=150円の大暴落に備える「円安」と「インフレ」に強い日本株30  なぜ円安の圧力は止まらないのか。前号の本欄では、アメリカと日本の金利差を主な理由として指摘した。しかし筆者はそれだけでなく、日本経済の水面下で起きている「構造的な変化」が為替に大きな影響を与えていると考える。  今年1月頃以降、日本は輸出額から輸入額を引いた「貿易赤字」が膨張を続けている。財務省が9月15日に公表した貿易統計(季節調整済み)によると、15ヵ月連続の赤字で、'22年8月分は2. 3兆円の赤字となっている。貿易収支の赤字基調は、1年以上も前からだが、今年1月頃から拡大幅が顕著になり、貿易収支の赤字が定着している。  実はこの貿易赤字が、円安の流れを加速させているのだ。海外から輸入したものの決済をする際、企業はドルで払うために「円を売ってドルを買う」ことになる。そのため貿易赤字それ自体が、円安圧力を生み出すことになる。さらに日本企業が海外で現地生産するケースも増えているが、その稼ぎは現地の再投資に回すのが効率的で、企業側からすれば稼いだドルを円に変換するインセンティブは少ない。  貿易赤字が定着している原因としては原油や石炭、天然ガスなどの資源価格の高騰のほか、円安による輸入コストの増大の影響が大きい。柏崎刈羽原発などの原発再稼働が不透明であることや、ロシアのウクライナ侵攻も資源価格の上昇に影響を与えており、当分の間、貿易赤字は継続する可能性がある。

アメリカも助けてくれない

 円安が続く限り貿易赤字が膨らみ、貿易赤字が膨張すればさらに円安が進んでいく......。日本経済は完全に負のスパイラルに陥っているといっていいだろう。  それでもなんとか円安の流れを食い止めようと、日本政府は9月22日に為替介入を決断した。だが、その限界はすでに明らかになっている。  円買い介入の原資は日本の外貨準備であり、約1. 3兆ドル(約187兆円)が上限となる。だが、アメリカ・ドルと日本円の一日の平均取引量は100兆円以上もあるため、政府当局の円買い介入が影響力を行使するには、数十兆円規模の為替介入が必要となる。そのため、仮に10兆円規模の為替介入を数回行えば、いずれ外貨準備が底をついてしまうのだ。  また、仮にアメリカが日本の円買い介入に協調してくれれば効果も高まるが、現在のアメリカは自国のインフレ抑制に躍起になっており、物価高騰を加速する「ドル安」誘導政策に協調するとは思えない。今後、'85年のプラザ合意のように「ドル高の是正」が政治的な最重要課題になる可能性もゼロではないが、9月22日の為替介入では、アメリカは日本の介入を容認したものの、協調はしなかった。  いずれにせよ、現在の円安の原因は日米の金利差(FRBと日銀の金融政策のスタンスの違い)だけではないのだ。根本的な問題を解決するには、「貿易赤字」の是正も必要になるという現実から目を背けてはならないはずだ。  「週刊現代」2022年10月15・22日号より

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