焦点:米金利に大幅上昇圧力、米株も打撃拡大へ 身構える市場
[ニューヨーク 14日 ロイター] - 8月の米インフレ率が高止まりしたため、一部の債券投資家はこれまでの見通しを上方修正し、米連邦準備理事会(FRB)がさらに利上げを積極化するのではないかと身構えている。
実際にそうなれば、既に売り込まれている株式・債券市場にとって、不都合な展開となりそうだ。
政策金利見通しの指標となる2年物米国債利回りは14日に3.79%と、2007年11月以来の最高水準近辺で推移した。一部のファンドマネジャーは、上昇が続いて4%を突破し、15年ぶりに最高値を更新すると予想し始めている。
コロンビア・スレッドニードルのシニア・グローバル金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は「逃げ道はない。労働市場にもっと弱さが見られない限り、金利がピークを打ったという確信はほんの少しも得られないだろう。目下のところ、そうした兆候はまったく不十分だ」と述べた。
債券利回りの上昇は今年、株式市場に売り圧力を加える要因となっている。特に、金利上昇によって将来の利益の現在価値が目減りし、資本コストが上昇しかねないグロース(成長)株やハイテク株は大きな影響を受ける。
S&P500種総合指数が8月半ば以来8.3%下げたのに対し、S&P情報技術株指数の下げ率は12%余りに達している。S&P500種は、年初からは17%下げている。
アルフセイニ氏は、金利上昇が消費者と企業を圧迫し、米経済は最終的にリセッション(景気後退)に陥ると予想。このため株と債券は今後も下げ続けるとみている。債券はその後落ち着きそうだが、株その他のリスク資産はさらに下げる可能性があると言う。
「ダメージはまだ増える」と同氏は語った。
<ゲームエクステンダー>
13日に発表された8月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率は前月比が0.1%、前年同月比が8.3%と、市場予想とFRBの目標値2%を上回った。
20─21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で100ベーシスポイント(bp)の利上げが実施される確率が30%あることを、市場は現在織り込んでいる。8月CPIの発表前はこれが0%だった。その後数カ月間についても、利上げ幅の予想を上方修正するアナリストが出てきている。
13日のCPI発表以前から、債券利回りの見通しは上昇し始めていた。ドイツ銀行が今週初めに実施した調査では、10年物米国債利回りが1%に下がるより5%に上昇する確率の方が高いと答えた投資家の割合は73%と、6月調査の60%から増えた。同利回りは現在3.41%前後。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのFICCテクニカル・ストラテジスト、ポール・シアナ氏は14日のノートで「10年債利回りが年初来高値を更新して3.5%を超えるようなら、(中略)4%到達を巡る議論が話題の中心に戻ってくるだろう」と予想した。
ハーバー・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ジェーク・シュアメイエ氏は、8月CPIの発表によって、2年物米国債利回りが年末までに4%を超える確率は高まったと述べた。
「サービスセクターのインフレ率がFRBの想定以上に上昇し、FRBが一段と積極的な利上げを余儀なくされることが根本的なリスクだ」という。
シュアメイエ氏は現在、FRBが年末までに合計175bpの追加利上げを行い、来年もリセッションに陥るまで2、3回利上げすると予想している。
ただ、BMOキャピタル・マーケッツの債券ストラテジーチームで米金利ストラテジーを統括するイアン・リンジェン氏は、リセッション入りのリスクが高まっているため、国債利回りが急上昇したとしても長続きしないかもしれない、と指摘する。
「13日発表のCPIがFRBの『ゲームチェンジャー』になったと結論付けたい誘惑に駆られる」が、「より正確に言うなら『ゲームエクステンダー(ゲームを長引かせる要因)』だろう」とリンジェン氏は語った。
(David Randall記者)