米インフレ鈍化、原油価格下落が後押し 利上げ幅さらに縮小の観測
米国の記録的インフレが鈍化している。12日に発表された2022年12月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比6・5%上昇と6カ月連続で前月を下回り、21年10月以来の低水準となった。まだ目標とする2%を大きく上回るが、勢いが鈍っているのは明らかだ。インフレ退治のため急ピッチで利上げを続けてきた米連邦準備制度理事会(FRB)は、12月会合で上げ幅を0・75%から0・5%に縮めたが、次回会合では更に0・25%に縮めるとの見方が強まっている。
【バイデン政権発足時と現在の経済指標の比較】
「6カ月連続のグッドニュースだ」。バイデン米大統領は12日、ホワイトハウスで開いた記者会見で、米国民の生活に打撃を与えてきたインフレ率が22年6月(9・1%上昇)をピークに低下し続けていることを歓迎した。
最大の要因は原油価格の下落だ。世界経済の悪化により需要が減るとの見方で原油相場が低迷し、米国のインフレの象徴的存在だったガソリン価格が低下。6月に全米平均で1ガロン(約3・8リットル)=5ドル(約650円)を超え史上最高値を更新したが、足元では3・2ドル程度と約4割安くなっている。
12月のCPIの内訳を見ると、エネルギーは前年同月比7・3%上昇で、前月の13・1%上昇から勢いが鈍化。ガソリンに至っては1・5%下落と前年同月を下回る水準だ。中古車も8・8%下落で、半導体不足で新車生産が滞り異様に値上がりしていた前年同月に比べ大きく下がっている。
一方、接客などのサービスは前年同月比7・0%上昇と前月(6・8%上昇)から勢いが加速。家賃などの住居費も前月(7・1%上昇)を上回る7・5%で、根強いインフレの要因となっている。
FRBは記録的インフレの抑制のため11月会合まで4会合連続で従来の3倍となる0・75%の利上げに踏み切ったが、急激な金融引き締めの影響を見極めようと12月会合では上げ幅を0・5%に縮めた。3月以降、7会合連続の利上げで、政策金利の誘導目標は4・25~4・5%にまで高まっている。パウエル議長はペースを落としつつも利上げを続ける考えを示しており、次回1月31日、2月1日に開く会合での上げ幅が焦点となっている。
フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は12日の講演で、「今後まだ数回利上げするだろうが、0・75%の利上げは確実に終わった。今後は0・25%が適切だろう」と表明。講演原稿は12月のCPIが発表される前に用意されたものだが、市場では、利上げ幅をFRBの「巡航速度」である0・25%に戻すとの見方が強まっている。【ワシントン大久保渉】