米上院、気候変動・医療対策法案を可決 58兆円規模

2022年08月08日

米上院は7日、10年間で歳出総額4330億ドル(約58兆円)規模の気候変動・医療対策法案を可決した。民主党が過半数を占める下院での審議や採決が順調に進めば、8月中旬にもバイデン大統領が署名して成立する見通しだ。民主党は11月の上下両院選などの中間選挙に向け、同法案を「インフレ(物価高)抑制法案」と称して有権者へのアピール材料にしたい考えだが、インフレ抑制としての即効性は乏しく、「看板倒れ」と批判されるリスクもある。  法案には、再生可能エネルギー分野での投資や、電気自動車やエコ住宅の購入者に対する税額控除などの気候変動対策、薬価引き下げ策が盛り込まれた。15%の最低法人税率導入や徴税強化などによって7000億ドル以上の歳入増加も見込み、このうち3000億ドル以上を財政赤字削減に充てる見通しだ。  7日の上院(定数100)での採決では、無所属を含む民主系50人が賛成、共和党50人が反対し、上院議長を兼ねるハリス副大統領の決裁票で法案が可決された。上院では規則上、法案の採決手続きを進めるのに60人の賛成が必要だが、民主党は歳出入などに関わる法案に適用される特例措置によって、必要な賛成人数を過半数に引き下げていた。  バイデン氏は法案可決直後に声明を発表し、「私は大統領に立候補する際、政府が労働者の家族のために再び働くことを約束した。まさに、この法案の内容があてはまる。処方薬や健康保険の費用を引き下げ、最も裕福な企業に応分の税負担をさせることで、上院の民主党は米国の家族たちの側に立ったのだ」と強調。下院にも審議を急ぐように求めた。  バイデン政権は当初、教育・子育て支援などを含めて、10年間で約1兆8500億ドル(約250兆円)規模の大型歳出法案の成立を目指していた。だが、インフレが進むにつれて、党内の中道派のマンチン、シネマ両上院議員が「巨額の歳出がインフレを助長する」と難色を示し、今年1月に党内協議は決裂した。  しかし、中間選挙が近づくにつれてインフレが加速し、民主党の劣勢が報じられる中、共和党に上下両院の多数派を奪還される前に「実績」を残したいとの思惑から、妥協の機運が高まった。バイデン氏は一時、気候変動対策を後回しにしてでも、薬価引き下げなど「インフレ対策」につながる法案を優先するよう議会に要請した。  上院の党指導部は、3~4歳児の教育費無償化や子育て支援の税額控除拡充など目玉政策の多くを断念し、歳出規模を4分の1程度に縮小した。米メディアによると、マンチン氏の選挙区内で建設中のガスパイプラインの完成を急ぐ法案を審議するのと引き換えに、マンチン氏から賛同を引き出した。シネマ氏が要求した非上場企業への投資に関する税優遇措置の維持も受け入れ、法案可決に必要な民主系全員の賛成を取り付けた。  バイデン政権にとっては、新型コロナウイルス禍からの経済再生を目指した1兆9000億ドル(約256兆円)規模の経済対策法(2021年3月成立)、超党派で成立させた5年間で総額1兆ドル(約135兆円)規模のインフラ投資法(21年11月成立)に続いて、3本目の大型法案となる。歳出抑制で中道派との妥協をはかる一方、歳出の大半を気候変動対策に割いて民主党左派に配慮を示した。  ただ、「インフレ抑制法案」と称しても、即効性のある物価抑制策は盛り込まれておらず、党内からも「インフレ対策の効果はごくわずかだ」(民主系のサンダース上院議員)との声が上がる。物価高対策を期待する有権者の不興を買う可能性もあり、3割台後半まで落ち込んだバイデン氏の支持率回復につながる見通しも立っていない。【ワシントン秋山信一】

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