米中、長期の我慢比べ 旧知の首脳、対話3時間 衝突回避、台湾で譲らず〔深層探訪〕
バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は14日、インドネシア・バリ島のホテルで、初めて対面での首脳会談を行った。衝突回避で一致したものの、台湾問題などの原則は譲らなかった。米中両国は互いを数十年にわたる競争相手と改めて認識し、長期の我慢比べに入る情勢だ。
◇世界が注目
「お久しぶりです」「大統領、ニーハオ」
バイデン、習両氏は互いに歩み寄りながら、にこやかに握手した。着席した両首脳は会談冒頭、ともに「世界が米中の動向を注視している」などと述べ合って、対話の重要性を確認した。
2人の関係は長い。バイデン氏はオバマ政権の副大統領時代に訪中し、国家副主席時代の習氏から厚いもてなしを受けた。10年以上が過ぎ、両者が変わったのは立場だけではなかった。かつてのオバマ政権の対中政策は「関与」を前提としていたが、バイデン政権は相いれない価値観を持つ相手との「競争」と位置付けているからだ。
◇明確な温度差
米中関係専門家らが予測したように、約3時間続いた首脳会談は、一致点より不同意の方が多かった。
バイデン氏が最も強調したのは、不測の事態に備えて「政府間の対話のチャンネルを常に開いておく」という点だ。8月のペロシ米下院議長の訪台後、中国側が主な対話の窓口を閉じたことへの危機感がある。
習氏は「台湾問題は中国の核心的利益の中の核心であり、中米関係の最初に越えてはならないレッドライン(譲れない一線)だ」と強調。「米国には米国式民主があり、中国には中国式民主がある」とも主張した。
米中の温度差は、会談内容の発表からもうかがえた。米側は中国との「対決を望まない」(バイデン氏)立場や協力姿勢を前面に出したが、中国側は米国こそが「言行不一致」で現状を変更しつつあるという不満を隠さなかった。
一方、今回の対面会談を経て、米中は気候変動対策や食料安全保障などさまざまな協力を再開することで合意。諸問題の解決に継続的に取り組むため、双方の高官に権限を付与することでも一致した。
◇それぞれの試金石
バイデン政権は近くブリンケン国務長官を中国に派遣し、中国側の真剣度を見極める。ラッセル元国務次官補(東アジア・太平洋担当)は取材に対し、「(米中の)直接対話と体系的な関与は、戦略的対立の悪化を食い止めるための必要条件」と分析した。
中国側は、歴代米政権による「一つの中国」政策の維持といった約束の履行を「試金石」とし、米議会が審議する台湾関連法の行方などを警戒する。米議会の強硬姿勢にバイデン政権がどう対応するか、じっくり見る構えだ。
習氏は異例の3期目に突入し、バイデン氏も中間選挙を乗り切るなど、指導者として国内基盤を固めた上での再会だった。実際に顔を合わせた習氏の対米姿勢をどう評価するか―。記者から質問されたバイデン氏は答えた。
「対立的でも融和的でもない。彼はいつものように直接的で率直だった」。(ヌサドゥア、北京時事)