米4Qは高成長、忍び寄る景気後退

2023年02月07日

【経済着眼】早ければ1-3月期にマイナス成長

FRB本部=CC BY /AgnosticPreachersKid

 1月26日に発表された米国の2022年の10~12月の実質成長率は前期比年率で2.9%増と市場予想(大勢で2.6%増)を上回った。改定後の7~9月の同3.2%増からは伸びが鈍化したとはいえ、二期連続で潜在成長率といわれる2%を上回った。  その前の22年1~3月、4~6月はマイナス成長を記録してテクニカル・リセッション(実質成長率が二期連続でマイナス)に陥っていた。  2021年の実質成長率が新型コロナ感染でロックダウン等が続いて経済活動が低迷した20年の反動もあって5.9%増と1984年以来37年ぶりの高水準となったあと、22年通算では2.1%増にとどまった。  10~12月の実質成長率は、FRBが昨年3月にゼロ金利を撤廃して、累次にわたる金利引上げ実施して4.25~4.5%まで大幅な利上げを行ったわりには堅調な伸びとみる見方もある。例えば、個人消費が前期比年率で2.1%と三期連続で2%台と安定的な伸びを示したことだ。バイデン大統領も米国経済の堅調さを示すものとして言及している。  しかし、一方で、需要項目別にみてみると、内容的には経済減速を示しているとみられている。第一には在庫変動が1.5%の寄与度と成長のほぼ半分を説明していることだ。在庫積み上がりの理由はクリスマスセールの不振などが取り沙汰されているが、いずれにせよ、積みあがった在庫の調整のためには先行き生産の減少が必要となる。  輸出は世界景気の減速などから前期比-1.3%の減少となった。しかし、輸入も7~9月の同-7.3%減に続いて10~12月も輸出の減少幅を上回る同-4.6%の減少となった。輸入が大幅に減るというのは一般に国内経済活動の低迷を反映したものとみられている。  もっとも、GDP統計上は純輸出(輸出-輸入)がプラスとなり、成長率を0.6%ポイント引き上げた。在庫投資と純輸出が2.9%成長に大きく貢献した。内容的には喜べるものではない。  住宅投資は住宅ローン金利が7%を越える急騰をみせたことから同-26.7%減と大幅なマイナスとなった。GDP成長に対する寄与度は-1.3%減と大きく足を引っ張った。ちなみに12月の中古住宅販売台数は年率で約400万戸と12年ぶりの低水準となっているほか、同月の住宅建設許可件数も前年比約30%減となっている。さら設備投資も同0.7%の増加にとどまった。金利の上昇と先行き不透明感の増大が背景とみられる。  22年10~12月の実質成長率を前年同期と比べると、1.0%増と21年の5.7%増からは大幅な減少となっている。  失業率は3.5%と史上最低水準にある。GAFAなどテック企業の大量解雇が報道されているが、全体では大きな影響はない。ちなみに12月の新規失業保険申請者数は186,000人と前週比6千人の減少と22年4月以来の低水準となっている。一部のエコノミストの間では雇用の増加とそれに伴う賃金の上昇を勘案すると、失業率が5%まで上昇しないと、FRBのインフレ目標(2%)達成は難しいであろう、という予測となっている。  FRBは1月31~2月1日のFOMCではさらに0.25%の利上げを行い、年内に5%を越える政策金利を実現すると見られる。それでも、FRBは米国景気のソフトランディングが可能という見解を変えていない。  しかし、民間エコノミストの見通しでは、早いケースで23年1~3月にもマイナス成長に転落、遅くともFRB利上げの効果が出てくる今年下期にはリセッション入りするといった弱気の見方が標準的となっている。  10~12月のGDP統計にもうかがわれる米国景気の減速の兆候やFRB利上げの継続が世界経済に及ぼす影響を懸念するエコノミストが出てくるのも当然である。彼らの論理は次のようなものである。  世界第二の経済大国である中国がゼロコロナ政策のあまりにも拙速な撤退、効き目の乏しい中国製ワクチンの効果などを考えると中国の感染者が急増する事態もあり得る、このため工場の稼働に悪影響が及び再び世界のサプライチェーンに再び混乱が生じる懸念もある。  EUもウクライナでの戦争で天然ガスを中心としたエネルギー供給の混乱が生じてくる恐れがある。欧州の暖冬でドイツを中心に天然ガスの在庫水準が高水準であるとはいえ、エネルギー供給のロシア依存を抜けて再生エネルギー等にシフトする道のりは長く、当面、経済成長は抑制的なものにならざるを得ない。  こうした時に果たして世界一の経済大国であり、経済パフォーマンスも相対的に良好な米国がインフレ抑制にこだわるあまり利上げに固執すれば米国の深刻な景気後退、さらには世界経済のリセッションを招きかねない。しかしながら、FRBもECBも眼前のインフレ抑制を喫緊の課題として厳しい政策運営スタンスで臨むことになろう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

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