米FRB、今年7度目の利上げ インフレ緩和も利上げ継続の可能性と
アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は14日、0.5パーセントポイントの利上げを発表した。これにより、アメリカの政策金利の誘導目標は過去15年で最高水準の4.25~4.5%となった。 FRBは、価格高騰を制御するために今後さらに利上げが必要になると警告。向こう1年で5%を超える可能性があると述べた。 一方でFRBは、ここ数十年で最も厳しいインフレに緩和の兆しが見え始めていると示す指標を受け、これまでより慎重な動きを見せ始めている。 今回の利上げも、これまでに比べて上昇幅が小さかった。 FRBのジェローム・パウエル議長は、FRBは住宅ローンや自動車ローン、クレジットカード負債を増加させている利上げの累積的影響に対する経済の反応を見るため、FRBとしての対応をこれまでより減速したかったと説明した。 しかし、今回の利上げは「今なお歴史的にも大きな上昇で、先はまだかなり長い 」と警告した。 金融危機後に何年にもわたり低金利が続いた後、アメリカが世界的な借入コストの上昇を主導している。その中でFRBの動向は世界中で注目されている。 アラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアはすでに、FRBの動きに同調して金利を挙げた。 イギリス中央銀行のイングランド銀行も、15日に0.5%の利上げを発表する見込み。イングランド銀は、イギリスが史上最長のリセッション(景気後退)に直面していると警告している。欧州連合(EU)の欧州中央銀行も同様の動きを取るとみられている。 ■インフレは改善しているのか FRBにとって、利上げは今年に入って7度目となる。 同行は、アメリカで過去40年来最大のインフレに対処しているが、アメリカのインフレ率は6月の9.1%をピークに減速傾向にあり、エネルギー価格なども下がっている。 アメリカの11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.1%上昇したが、上げ幅は10月の7.7%から縮小した。 FRBのパウエル議長は、インフレ改善の兆候には勇気づけられるが、インフレが持続的な低下傾向にあると確信するには、「さらにかなり多くの証拠」が必要だとして、「改善がみられるのは良いことだが、価格安定に戻るにはまだ先は長い」と述べた。 金利を上げて借り上げコストを増やすことで、FRBは経済活動を鎮静させ、価格上昇圧力を抑えようとしている。 しかしこの方針は、世界最大の経済を急激に後退させるリスクも負っている。 ■今後の見通しは? FRBは利上げに併せ、来年のアメリカ経済の成長見通しを、歴史的な平均を下回るわずか0.5%と発表した。一方で、失業率は4.6%まで上昇するとみている。 FRBの金融政策委員の多くは、インフレ率は減速していくものの、2025年までは3%以下にはならないと予測。これは、FRBのインフレ目標2%を大きく上回っている。 全体としては、経済見通しは数カ月前と比べても暗いものとなっており、インフレ対策の中でも容易な部分は終わってしまったという懸念を反映している。 プリンシパル・アセット・マネジメントのグローバル戦略主任を務めるセーマ・シャー氏は、「FRBは景気後退の可能性について依然として口を閉ざしているが、ほとんどのFRB関係者がリスクを下方修正しているため、建前よりもはるかに景気の先行きを心配していると言ってよいだろう」と指摘した。 住宅市場など一部の経済は、すでに金利上昇の影響で低迷している。また、力強い雇用市場にもかかわらず、広範囲での経済低迷を懸念する声がある。 そのため、FRBは自分たちの金融政策に伴うコストの重さを、考慮に入れるべきだという圧力がかかっている。 しかしパウエル議長は、FRBは長期的にさらに大きな経済へのダメージが見込まれるインフレに注力していると説明。 「物価の安定を取り戻すのに全く痛みを伴わない方法があればいいが(中略)そんなものはない。これが私たちにできる最善の方法だ」と述べた。 (英語記事 Fed hikes rates again and warns of more rises)
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