経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」
---------- 自信なさげにボソボソ喋るメガネの男、キシダに国を任せていて大丈夫なのか? 世界は、日本の総理に厳しい目を向けている。いったいどうすれば日本は復活できるのか、国内外の7人の「知の巨人」に聞いた。3人目は経済学者・野口悠紀雄氏だ。 ---------- 【写真】「賃金を上げて、非正規雇用を見直せ」ジャーナリストのビル・エモットの提言
ブレーキとアクセルを同時に踏む日銀
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いま岸田総理がやるべきことはただ一つ、「円安を止めること」です。 それなのに、政府は「総合経済対策」で誤魔化そうとしています。この対策の柱は高騰するガソリンや電気、ガスに対し補助金を出すという内容で、一見、暮らしが楽になると思われるかもしれません。 しかし結局は円安による価格高騰を見えなくして、問題を覆い隠しているだけなのです。 円安の原因は、「日本とアメリカの金利に差があること」です。今年3月以降アメリカが金利を上げているのに、日本は金利を上げていない。 その結果、金利が高いドルを買って円を売る動きが生まれ、円安になる。この日米の「金利差」を解消しない限り、円安は止まりません。 ところが日銀は、金利を上げようとはしない。それどころか、為替介入という円安の「ブレーキ」と同時に、金利抑制策という「アクセル」を踏むという不可解な状態を続けています。
「リスキリング」では解決できない
いったいなぜ金利を上げないのか。それは大企業をはじめ、円安によって利益を受けている人々がいるからです。特に製造業は、輸入する原材料費は価格に上乗せして国民に転嫁することで円安の恩恵を受けている。 しかしその陰で、円安で増大したコストを価格転嫁できない中小企業が苦しんでいる現実があるのです。 そもそもこの流れが始まったのは、2000年代はじめでした。中国が工業化し、日本の製品は価格競争にさらされるようになりました。そこで政府が取った戦略が、「円安誘導」だったのです。 しかしこの時期、本当に必要だったのは他の国が追いつけない新しい技術を作ることでした。実際、アメリカやアイルランド、韓国、台湾などは、ITに対応した技術の開発に成功し、いまも世界のトップを走っています。 一方、日本は円安による「安売り戦略」に依存し続け、総じて企業の力が弱くなった。 岸田総理が言う「リスキリング」(新しい知識や技術を学ぶこと)も重要ですが、これだけで解決できるほど根は浅くない。企業が大学院などの高等教育をもっと高く評価し、研究・開発に力を入れなければ、日本企業が強くなることはできません。 金利を上げて円安を止める。そして円安依存してきた企業の開発力を高めていく。日本再生の道はこれしかありません。 「知の巨人」シリーズ 1ポール・クルーグマンが激白「日本経済を復活させるには、定年を廃止せよ」 2昭和史を見つめてきた作家・保阪正康が岸田総理を斬る「宏池会の系譜に学ばぬ首相に失望した」 4「賃金を上げて、非正規雇用を見直せ」ジャーナリストのビル・エモットが考える「日本再生への道」 「週刊現代」2022年11月12日号より