途上国で化石燃料を禁止し、電力を奪う先進国ニッポンの「正義」とは?
気候植民地主義」で途上国の芽をつむ
Photo by GettyImages
ウクライナの戦争に端を発したロシアからのガス供給不足によって、欧州でこの冬には停電の危機が迫るとされている。ドイツをはじめ欧州諸国は、液化天然ガスや石炭など、これまで忌み嫌っていたエネルギーの調達に躍起になっている。また石炭火力発電所を可能な限り稼働させる手配をしている。 【写真】再逮捕された「美人すぎる寝屋川市議」の写真集全カット 欧州が世界中で買い漁っているせいで、世界のエネルギー価格は暴騰している。 この煽りを最も受けているが、貧しい国である。化石燃料資源を持たない開発途上国は、いま悲惨な状態になっている。スリランカの経済が破綻し大規模デモがおきて政権が転覆したのは、数々の失政が重なった結果であるが、とどめの一撃となったのは燃料費の高騰でガソリンが輸入できなくなったことだった。いま世界の多くの国で、エネルギー価格の高騰によって、貧困がますます悪化している。 そのなかで開発途上国は、先進国のエリートたちによって、化石燃料のない「貧困に満ちた未来」への道を強制的に歩まされている。気候危機説を信奉する指導者たちが、開発途上国での化石燃料使用を抑圧しているからだ。 哲学者のオルフェミ・O・タイウォは、この現象を「気候植民地主義」と呼んでいる。それは「貧しい国の資源を搾取したり、主権を損なったりするような気候変動対策を通じて、外国による支配を強化すること」と定義される。 経済成長には安定したエネルギー供給が必須だった。それは石炭、石油、天然ガスによって賄われてきた。化石燃料は欧州、米国、日本、中国、いずれの工業化にとっても必要不可欠だった。 だがいま国際機関とG7先進諸国の主要な金融機関は、CO2排出を理由に、開発途上国の化石燃料事業への投資・融資を停止している。これは開発途上国の経済開発の芽を摘むものだ。 じつは日本もこれに加担している。 6月22日に、日本の外務省はバングラデシュとインドネシアに対する政府開発援助(ODA)による石炭火力発電事業支援の中止を発表した。CO2の排出が理由であり、G7の意向に沿った形だ。 ちょうどその同日、この夏の電力不足に対応するため、停止していた火力発電所の再稼働を急いでいる、とのニュースが流れた。千葉県の姉崎火力発電所5号機、愛知県の知多火力発電所5号機などだ。 自分の国で電力不足になると火力発電に頼る一方で、途上国の火力発電所は見捨ててしまうというのは道義にもとる。日本がいま電力不足なのは事実だが、バングラデシュほど慢性的に電力が不足し、停電が頻発して経済に甚大な悪影響を及ぼしている訳ではない。 開発途上国の化石燃料利用を禁止したうえで、今後は経済開発を再生可能エネルギーで実現しろと命じるのは、発電の物理的現実と何十億人もの貧困を否定する傲慢さを示すものだ。 サハラ以南のアフリカでは、6億人が電気を持たず、8億9千万人が薪炭や動物のフンなどの伝統的燃料で調理をしている。調理用の化石燃料を利用できる人はわずか14%だ。 じつはアフリカには膨大な天然ガスがある。600兆立方フィートの天然ガスが埋蔵されており、その3分の1はエネルギーに乏しいナイジェリアにある。これはアフリカのために開発すべきであり、先進国は全力で支援するのが道義だ。